この恋に名前をつけるとするならば

それから、わたしはメジャーデビューが決まってからの命くんの新居に一緒に帰った。
といっても驚いた事に、命くんは雅と同じタワーマンションに引っ越して来ていた。

それからもう一つ驚いた事があり、"アッシュリーガル"が所属する事になった音楽事務所は雅が個人で設立した事務所だったのだ。

普通の音楽事務所では、わたしへの配慮をしながら活動していく事が難しいと考えた命くんと雅は話し合い、わたしの知らないところでそのような方向で話を進めてくれていたのだ。

今後、わたしが生活するのは命くんの家。
日中に身の回りのお世話をしてくれるのは、これまで通り中村さんにお願いする事になった。

「麗月さん、今日は何をお召し上がりになりますか?」

いつも通り中村さんが夕飯のリクエストを訊いてくれる。

そこでわたしは、迷うこと無く「カレーがいいなぁ。」と答えた。

「カレーですか?麗月さんがカレー好きだなんて、初耳ですね。」
「命くんが帰って来たら、一緒に食べたいの。」

わたしがそう答えると、中村さんは「ふふっ。」と微笑み「そういう事ですね。」と納得していた。



それからわたしの体調が良い日には、久しぶりに命くんと外へ出掛けた。
外の空気を吸うのは、いつぶりなのか忘れてしまうほど久しぶりだった。

「命くん、どこ行くの?」
「ん?着いてからのお楽しみ!」

そう言って命くんに連れられてやって来たのは、有名なジュエリーショップだった。

「え、ここ?」
「そう。結婚指輪、買おう?」

あまりの突然な展開に驚いたが、わたしの心は一気に高鳴りを感じさせた。

二人で色んな指輪を見て、試着して、選びに選び抜いたお気に入りの指輪。
サイズも丁度あり、わたしたちはその日のうちに持ち帰る事が出来た。

家に帰ると、わたしたちはソファーに並んで座り、早速指輪が入った箱を開けた。

二つの指輪が並ぶその光景にわたしの胸はトキメキ、いまだに夢なのではないかと疑ってしまうくらいだ。

命くんはわたしの指輪を箱から取り出すと、わたしの左手を取った。

「指輪つけて大丈夫かな?痛くない?」
「うん、大丈夫。」

そして、わたしの左手薬指にそっと指輪を通す命くん。
その次にわたしは命くんの指輪を手に取り、命くんの左手薬指に指輪をはめていった。

何だか恥ずかしい指輪の交換に、わたしたちはお互いの左手を見せ合い、笑い合った。

それから命くんはわたしを抱き寄せ、わたしも命くんの背中に腕を回した。

「もう絶対、離さないから。」

耳元で囁かれる命くんの声。

わたしはもうこれ以上ない程の幸せに包まれ、ポッカリ空いていたはずの心の穴もすっかり埋まっていた。


"アッシュリーガル"は、無事にメジャーデビューを果たし、ファーストシングルからドラマ主題歌に抜擢された。

そのファーストシングル、命くんが作詞作曲したらしい。
曲名は···

『この恋に名前をつけるとするならば』――――



―END―

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