【WEB版】無能才女は余命わずかなようなので、 最後に好きにさせていただきます ~クズ家族と離れたら健康になるどころか、稀代の才能が開花しました~
「いつもならお見舞いに来て、二、三日で王都に戻っていたけど、今回は長期滞在を決めたみたいだ。だから僕は嬉しい。王都は今、王宮魔術師たちの権力争いでちょっと荒れているという噂が耳に入ってくるし……」

 話すうちにテオドールの表情に陰りが見えた。

「大丈夫よ、テオドールが心配するよりも、ずっとアレク様は強いと思うわ」

 したたかな一面もあるしね!

「そうなんだ、お兄さまはすごく強いんだ!」

 励ますとテオドールの表情がパッと明るくなる。

「ねえ、お兄さまみたいな男性、どう思う?」
「えっ……そ、そりゃあ、かっこいい人だと思うけれど……」

 容姿は誰が見ても文句なしに、かっこいいと、うなずくだろう。サラサラと風に揺れる金の髪は、陽光を受けて柔らかく輝く。その瞳は、澄み渡る湖面のように静かで深く、吸い込まれそうなほど。

 キリッとした目元は意志の強さを感じさせ、形の良い唇は無言のうちに品格と色気を兼ね備えていた。どこか近寄りがたい気高さと、見る者を惹きつける静かな色気を持っている。
 立ち居振る舞いの一つひとつが洗練されていて、ただそこにいるだけで場の空気が引き締まるような、そんな存在感があった。

「本当!?」

 私の返答を聞いたテオドールはキラキラと目を輝かせる。きっと自慢の兄なのだろう。うらやましい。
 久々に脳裏に浮かんだのはレオナの姿。
 私たち姉妹との違いに小さく苦笑するしかなかった。

 午後、私はテーブルの上に癒しのしずくを準備し、カゴに入れていた。
 今日は療養施設に顔を出そうと思っている。

 あれから試行錯誤して癒しのしずくを作っていたが、やっと納得のいく出来栄えになった。
 子供たちの治療に使って欲しいと言ってみるつもりだ。味も苦みが消えて、ちょっと甘い。

 これなら飲み物感覚で子供でも大丈夫なはずよ。

 王宮魔術師が作るポーションの効果はどれほどかわからないけれど、いつかは私もそのレベルを作りたいものだ。
 カゴを手にして出かけようとしていた時、扉がノックされた。

 どちら様かしら?

 返事をして扉を開けると、そこに立っていたのはー―。

「不用心だな。確認もせずに扉を開けるなんて、攫われてしまうぞ」
「アレク様!?」

 いったい、どうしたのだろう。ついさきほどテオドールのもとから帰ってきたばかりだ。

「テオドールから、これを君に渡してくれと頼まれた」
「これは……‼」

 それは一冊の分厚い薬草図鑑だった。以前、貴重で滅多に見ることができない薬草図鑑があると、テオドールとの会話に出たことがあった。テオドールは王宮図書館にならあると思うと、言っていたっけ。

「うわぁ、ありがとうございます‼」

 図鑑を両手で受け取り、踊り出しそうな勢いで礼を言う。どこで手に入れたか気にはなるが、それよりも喜びが勝っていた。

「一刻も早く君を喜ばせたかったのだろう。この兄を使いっ走りに出すぐらいに」

 そうは言っても弟の頼みをすぐに聞いてあげるぐらい、溺愛しているように見えた。

「すっごく嬉しいです。喜んで飛び跳ねていたとお伝えください」

 図鑑をテーブルの上に置くと、パラパラとページをめくる。
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