最愛の灯を吹き消す頃に。
「ちーくんがね、」

「うん…」

「電話してきたの」

「いつ?」

「インフルになって…土曜日だったかな。身体中が痛いって、赤ちゃんに喋りかけるみたいな弱々しい声で言うの。いっぱい咳もしてたみたいだし。苦しそうだった」

「そう…」

「ちーくんのお母さんねぇ、酷いんだよ。自分に感染るからってちゃんと看病してあげないの。だから水分補給もきちんとできてなかったみたい。だからね、もう私に感染したっていいから会いに行こうって思った。だってそのほうがちーくんも安心して眠れるでしょ。ちーくんがニコニコしていられるなら私はなんだっていいんだから」

ああ。

それからちーくんと何を喋ったんだっけ。

会いたいって言い合って、それから…。

「九条先生が説明してくれたこと、何も憶えてない?」

「夢ってなんですぐ消えちゃうんだろうね。なんか可笑しかったなぁ。みんな腹話術の人形みたいに口だけパクパクさせてさ。なんにも聞こえないの。なんにも…私の、私の声だけが………ねぇ、夢、だったのかなぁ。放課後にはちーくんに会え………」

「新凪っ…新凪、聞いて。元宮くんね、インフルになって、なかなか熱が下がらなくて。いっぱい咳してたんだよね、肺炎を併発させてたみたいなの」

「肺炎」

「それを拗らせてしまって…呼吸困難みたいになって病院に搬送されたって」

「いつ」

「月曜」

「いつ、ちーくんの灯…命、なくなったの」

「日付的には火曜日には…。突然のことだったから学校への連絡が遅れたんだって」
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