最愛の灯を吹き消す頃に。
せっかくお母さんが作ってくれたたまご焼きもアスパラベーコン串も、ぐるぐる回る思考のせいで味がボヤけてしまう。
むしろ飲み込むのすらしんどい。
胃の辺りがモヤモヤとして気持ち悪い。

「にーいーなー。落ち込んでんの?」

さゆみがそう言って私の眼前でひらひらと手のひらを振った時だった。

ガラッと必要以上に大きな音を立てて空いた教室のドア。
階段を駆け上がってきたのか荒い呼吸のままの桑原さんがつかつかと私とさゆみの目の前まで大股で近づいてきた。
肩が大きく上下している。
心臓の灯が赤過ぎる。
怒りを原動力に鼓動している色だった。

「そんなん言うんだったらこの子はなんなのよ!」

後から入ってきたちーくんを睨みつけながら私を指差している桑原さん。
教室中がぽかんと呆気に取られている。

「桑原さん落ち着いて」

ちーくんは眉を八の字に下げて、困っていますって表情を張り付けている。

「どしたの、桑原さん」

苦笑しながら訊いたさゆみにキッとキツい目をして桑原さんが怒鳴るように言った。

「あたしが契くんのこと気に入ってんのみんな知ってんでしょ!」

みんな知っているんでしょう。
それはまるで所有物に名前を書いているみたいな、私のものなんだから手を出すなという威嚇にも聞こえた。
< 67 / 147 >

この作品をシェア

pagetop