最愛の灯を吹き消す頃に。
私と同じように下校中の、制服姿の中高生。

ランドセル持ちじゃんけんでキャッキャとハシャぐ小学生。

夕飯の買い出しの帰りなのか、自転車のカゴがいっぱいになるほど膨らんだエコバッグを乗せて走り去っていく主婦。

沢山の人の間を通り過ぎながら、杖をついてゆっくりと歩いていく目の前のおばあちゃんが気になった。
私とおばあちゃんの距離は十メートルも離れていないと思う。
腰の曲がった、細くて白髪のおばあちゃん。
「おばあちゃん」のイメージ通りのおばあちゃんだな、なんて思いながら眺めていた。

ゆっくりと横断歩道に差し掛かる。
歩行者専用の信号機は既に青がチカチカと点滅している。

おかしいと思った。
おばあちゃんが横断歩道の前で立ち止まる気配がない。

灯……まるでそれも信号機のように黄色に点滅している…!

さっきから小雨が降り始めていた。
昼間はあんなに明るかったのに空と同じように街全体が灰色がかって見える。

視界が良好だとは言えない。
腰の曲がったおばあちゃんはきっと、目があんまりよく見えていないのだ。

どうしよう、と考えるよりも先に体が動き出していた。

車道の信号が青に変わる。
一歩、横断歩道の白線へと足を踏み出してしまったおばあちゃんに驚いて、信号待ちの人から「あっ…」と声が上がる。

走って、咄嗟に掴んだおばあちゃんの細い手首。
グッと引き寄せて、軽いおばあちゃんの体ごと私も歩道に転がった。
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