最愛の灯を吹き消す頃に。
総合病院の待合室。

私は擦り傷程度だったけれどその場から逃げ出すわけにもいかず、既に一般外来の診察時間が終わってしまった薄暗いロビーでジッと座っていた。
待っている間に看護師さんに住所と電話番号を訊かれた。
私は何か犯罪を犯して、取り調べでもされているのかと思った。

しばらくしてロビーの自動ドアが開いて、バタバタとどこかの家族が走り込んできた。
広い待合室にぽつんと座る私を横目で認めただけで、その家族は救急治療室の通路へと消えていった。

それからすぐ後にもう一度自動ドアが開いた。
一瞬、立ち止まって待合室をグルッと見渡してから、早歩きで真っ直ぐに私まで突き進んできた人。

お母さんだった。

その後ろをお父さんとお兄ちゃんがゆっくりと歩いてくる。

パンッと乾いた音がロビーに響いた。

ジン、とした痛み、を感じる前にギュッときつく抱き締められる。
自分の身に何が起こっているのかすぐには理解できなくてフリーズしてしまった。

「ばか!血の気引いたわよ!」

「ごめ…んなさい…?」

「病院と警察から電話が来て!あなたが交通事故に巻き込まれたっておっしゃるから私達てっきり…」

「轢かれてないよ。大丈夫だから」

「お前なぁ…何やってんだよ」

「お兄ちゃん」

「新凪…良かった…ああ、ちょっと怪我しちゃったんだな。大丈夫か」

「お父さんありがとう」
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