最愛の灯を吹き消す頃に。
ハンカチで目尻を押さえて涙を拭ったお母さんは「もう…ほんとにっ…」って言って両手で私の頬を包み込んだ。

「ほら、新凪は良いことをしたんだよ。引っ叩くのは可哀想だろう」

「そうね…。新凪、ごめんなさい。あんまりにも気が動転していて…」

「いいの。私も驚かせてごめん」

「すみません、真中新凪さんのご家族の方ですか」

声をかけられてお母さんと一緒に立ち上がる。
さっきの看護師さんと一緒に、うちの家族が来る前に入ってきた家族の人達が頭を下げている。

「このたびは母を助けていただき本当にありがとうございました。わたくしどもの管理不足で娘さんを危険に晒してしまい大変申し訳ございませんでした」

「謝罪をしていただくようなことではございません。お母様のお怪我はいかがですか。娘が引いたことによりお母様が転倒なさったと伺っております。こちらこそなんとお詫び申し上げたら良いか…」

お父さんの言葉に夫婦が首を大きく横に振った。

「もしも娘さんの勇気ある行動がなければ今頃母は…。見ず知らずの人のために命を賭けてくださった恩人です。感謝しても足りません。新凪ちゃん、本当に…本当にありがとう。この恩は一生忘れません」

喉の奥がグッと詰まる感覚がした。
力を込めていないとそれは涙となって流れてしまいそうだったから我慢した。

「おばあちゃん、大丈夫なんですか」

「ええ。擦り傷と、少しの捻挫で済んだのよ。新凪ちゃんにありがとうって母からも」

「良かった…」

「どうぞお母様にお見舞いお伝えください。その後何かございましたらこちらに」

お父さんが仕事で使っている名刺を渡して、家族同士頭を下げ合ってから私達は病院を出た。
< 77 / 147 >

この作品をシェア

pagetop