エリート救命医と身代わり花嫁の再会愛。
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「現状を整理します」
凛くんが静かに切り出した。さっきとは少し声のトーンが変わった。仕事の顔だ、と思った。柔らかさが引いて、代わりに静かな鋭さが出てくる。
「父さんの不正融資の経路は、ほぼ全部追えています。関係会社を三つ経由して、クリニックへの融資に紛れ込ませる形で資金を動かしていた。表向きは正規の融資ですが、実態は父さんの持っている関係会社が利率と返済条件を操作できる仕組みになっています。これは弁護士に渡して、来週中に告発できる状態です」
私は黙って聞いていた。自分の家族が関わっている話なのに、こうして整理されて並べられるとひどく遠い話のように感じる瞬間がある。難しい話だからか他人事のようだが他人事じゃない。これが自分の家の話なのだということが信じられないし信じたくなかった。
「告発した場合、父さんの持っている関係会社は業務停止になる可能性が高い。それにクリニックへの不正融資も無効化できる見込みです。借金の残額については、航大さんが肩代わりする形で清算する予定ですが」
凛太郎くんがちらりと航大くんを見た。航大くんが静かに頷く。
「それは、俺が責任を持つ」
私は思わず航大くんを見た。彼はごく自然な顔をしていた。当たり前のことを言っているような顔で。
「……そんなに大きな金額なのに」
「問題ない」
さらっと言うから、胸がいっぱいになった。私はもう一度、凛太郎くんに向き直った。
「麗の件も、新しい情報が入った」
凛太郎くんの声が、少し慎重になった。
「現地の連絡経路を通じて、麗本人と間接的にコンタクトが取れました。本人は日本に戻りたがってるようだ。パスポートを返してほしいとも言っているそうです。ただ、父さんの監視が入っているため、直接の連絡は今のところ難しい状況」
「……麗と、連絡が取れたの?」
思わず聞き返すと、凛太郎くんが頷いた。
「間接的に、ですが。本人の意思は確認できています。これで、父さんによる旅券の不法保持として動けます。麗側の弁護士も、現地で手配しました。麗さんが望むなら、帰国の手続きも同時に進められます」
航大くんが、静かに口を開いた。
「つまり、来週の告発と同時に、麗の保護も動かせる」
「そうです。タイミングを合わせた方が、父さんが対抗手段を取りにくい。告発、麗の保護、クリニックの融資無効化——全部同時に動く方がいい」
二人のやり取りを聞きながら、私は改めて思った。この人たちは、ずっとこれを準備していたのだ。私が知らないところで、私のために。
いや、もしかしたら、私が知らない頃から——航大くんが二年間調べ続けていた時から、ずっと。