エリート救命医と身代わり花嫁の再会愛。
言いたい。私は、今も、こんなに狂おしいくらい、あなたを愛してるって。大好きだって伝えたいのに。
けれど、言葉にしようとすればするほど、氷のように冷酷な現実が私の唇を凍りつかせる。
もし真実を話して伯父の怒りに触れれば、クリニックはこの穏やかな日々は一瞬で崩れ去るだろう。 愛しているからこそ、この嘘という名の鎖を自ら解く勇気が出ない。
「……はるちゃん」
彼が私の名前を、低く熱く囁いた。観覧車が頂上に差し掛かり、世界が止まったかのようなその瞬間、航大くんの顔がゆっくりと近づいてくる。
私は反射的に目を閉じ、彼の長い睫毛が触れるほどの距離で、喉の奥に詰まった息を飲み込んだ。
唇が触れ合う直前、私は彼を拒絶することもできず、けれど麗の身代わりとして彼を受け入れることへの罪悪感に、指先まで激しく震えた。彼のコートの裾を、ぎゅっと、痛いほど強く握りしめる。
「……航大くん、私……っ」
想いを告げる勇気も、嘘を完璧に突き通す覚悟も持てないまま二人の唇が重なり合おうとしたその時——私のバッグの中で、無機質で鋭い着信音が、魔法を解くように静寂を切り裂いた。
「はるちゃん、出ていいよ」
震える手でスマートフォンを取り出す。液晶画面に冷たく表示されたのは【楪 湊生】という名。
伯父からの、結婚式以来の着信だった。