エリート救命医と身代わり花嫁の再会愛。



「院長、からだったんだろ? どうかした?」



 その声は穏やかだったが、いつもの優しい声じゃない……底に隠された鋭い何かが私の心を震わせた。私は首を横に振り、弱々しく微笑もうとした。

 でも、笑えていたかどうか自分ではわからない。
 今の私は、悠南じゃないのに悠南として幸せを求めてしまっている。父に危害が及ぶかもしれないのに悠南としての幸せを選んでしまいそうになる。

 どう考えたって、選ぶべきは父であり生まれ育ったクリニックだ。クリニックには、働いてくれているスタッフもいる。守るべき人がたくさんいるのだ。自分の感情だけで動いてはダメだ。


「……なんでもないよ」

「嘘だな」



 航大くんは私の手を優しく、けれど決して逃がさない力で握り直した。彼の瞳が、まっすぐにこちらを見つめる。その眼差しには怒りも責めもなかった。ただ、真剣な深い心配の色だけがあった。


「はるちゃん。俺はもう、君に悲しい顔をさせたくないんだ。二年前に君が突然消えた時も噂とは違う……何か違う大きな理由があったんだろう? 今も、同じように誰かに縛られている気がしてならない。……話して欲しい」


 私は唇を強く噛み俯いた。ここで真実を話せば、すべてが終わってしまう——でも、それを話したところで何になる。なんともならない、きっと。



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