エリート救命医と身代わり花嫁の再会愛。



 航大くんは静かに、しかし一言一言を確かめるように続けた。



「院長の計画、かなり具体的にわかってきた。あいつは最初から、榛名家の資産を狙っていた。麗の失踪を隠蔽したまま君を身代わりに使って、療養費や支援金という名目で金を引き出す計画だ。表向きは”榛名家への配慮”として動いているが、実態は組織的な詐欺に近い」


 私は黙って聞いていた。知っていたことも、知らなかったことも、こうして整理されて並べられると改めて背筋が冷たくなる。
 伯父の冷たい声が、また頭の中で響いた気がした。


「さらにクリニックの借金を意図的に膨らませて差し押さえ、君と父親を永遠に手元に縛っておく計画も同時に動いている。君が逃げられないように、じわじわと追い詰めるやり口だ。クリニックへの融資の一部に、不自然な経路があることも凛太郎くんが掴んでいる」

「……不自然な経路って、どういうこと?」

 私は思わず聞き返した。クリニックの借金については父から聞いていた。でも、その融資自体に問題があるとは知らなかった。

「表向きは正規の金融機関からの融資だが、その背後に院長が絡んでいるらしい。つまり、利率を操作したり、返済条件を意図的に不利にしたりできる仕組みになっている。クリニックが返済できなくなれば、院長側で差し押さえを進めることもできる。最初から逃げられない罠だったんだ」

「……そんなに、周到に」


 声が掠れた。
 伯父が私や父を嫌っていたのは知っていた。
 でも、これほど計算された悪意がずっと私たちの周りを取り囲んでいたとは——父は知っているのだろうか。
 父もずっと、この罠の中で生きてきたのだろうか。



< 94 / 159 >

この作品をシェア

pagetop