エリート救命医と身代わり花嫁の再会愛。
***
食事が終わると、彼は私の手を引き、バルコニーへ連れ出した。朝の風が気持ちよく、遠くに広がる街並みが朝日に輝いている。
航大くんは私の後ろから抱きしめると、顎を私の肩にそっと載せた。彼の体温が背中から伝わってきて、朝の風の冷たさをすっかり忘れさせる。
二人で、しばらく何も言わずに街並みを眺めた。朝の光の中で、遠くのビルが少しずつ輝き始める。どこかで車のエンジン音がして、鳥の声が重なって、街が目を覚ます音がする。
やがて、航大くんが少しだけ表情を変えた。優しさはそのままで、でも瞳の奥に静かな炎が灯る。
彼は私にリビングへと戻るように促すと、ゆっくりとリビングへ戻りソファに並んで腰を下ろした。
「はるちゃん、少し話があるんだ。……昨夜、君が寝た後に凛太郎くんに連絡を取った」
彼から聞くとは思わなかった名前に私は思わず顔を上げる。
「凛太郎くんに?」
「あぁ、あいつは薬剤部にいるから病院内の動きには敏感でな。前から俺の気持ちも俺が調べていることを知っていて、協力してくれていたんだ。昨夜の君の話を聞いて、すぐに確認したいことがあって連絡した」
「……え?」
「二年前から、彼は俺が調べていることを知っていた。ただ、君が身代わりで榛名家に入ることになったのは、最近わかったらしい。それを知ってから、薬剤部内の記録を洗い直してくれていたんだ」