まずは結婚してからだ
プロローグ
プロローグ


『俺たち結婚するから』

 とっさに口を突いて出た言葉だとしても、それは間違いなく本心だった。
 人混みの向こうに彼女が男に言い寄られているのを見つけてすぐ、思うよりも早く駆け出していた。
 誰にも取られたくない。
 強い思いが胸に溢れて焦り、彼女がいる十メートル先が、途方もないほど遠くに感じた。
今思えばその十メートルで、彼女を必ず堕とすと決意した。
 とはいえ彼女は頑固で真面目。
恋愛経験のなさが、納得の純粋さが邪魔をして、なかなか堕ちてこない。
 長く続く先輩と後輩という関係が先だって、どんなアプローチも冗談として流されるばかり。
 正攻法は通用しない。
彼女を堕とすためならどんな手でも使うと決めた。
 日ごとに高まる思いに身を震わせ、たどり着いたのは。

『俺と結婚して、ここで一緒に暮らせばいい』

 最初は互いの事情を解決するための結婚だとしても、彼女を囲い込んで気持ちを手に入れる。
絶対に逃がさない。そう決意し、提案した偽装結婚。

『私、偽装結婚なんてできません』

 彼女の反応は織り込み済みで、あきらめるつもりなど毛頭ない。
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