こもれび日和
律がそのメールを開いたのは、
まだ春の冷たさが少しだけ残る、朝のキッチンだった。

フライパンの予熱をしながら、
なんとなくスマホの通知を確認した時。

「料理ブログ『春夏秋冬食堂』を書籍化しませんか?」

差出人は、小さな出版社の編集者だった。

「……え?」

一瞬、何かのスパムかと思って読み返す。

そこには、

律のブログを数年前から読んでいること、

レシピと日々の小さなエッセイが
「一冊の本として読みたい」と思わせること、

よければ一度会って話を聞かせてほしいこと——

そんな言葉が、丁寧な文で綴られていた。フライパンの上で炒め始めた玉ねぎの香りと、

スマホの画面の中の文字が、
ふわりと混ざり合う。

「……マジか」

思わず声に出した。
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