オノマトペの友情リアリティーショー
【01 ペラペラ】
人間の世界とはまた別にオノマトペの世界があり、オノマトペの世界から人間の世界を覗き込むことができる……なんて、知ってるよ、わざわざ小学六年生の授業で教えられなくても、あ、チャイムが鳴った。授業終了だ。
・
・【01 ペラペラ】
・
いつの間にか肩身が狭い思いをしてしまうことは常々あって、今日も気持ちが萎み過ぎて、ペラペラの薄い紙のような状態に変化して、話題にあがらないようにじっとしていた。
授業以外、教室ではいないモノとして過ごしている僕。いつもこうなってしまうんだ。
最初は調子良く喋って、クラスの中心人物みたいになれるのに、いつしか僕が薄っぺらい”オノマトペ”だということがバレてしまい、若干クラスで浮くどころか、薄っすら嫌われてしまう。
そりゃペラペラのウンチクを語って、周りから「それただの陰謀論だよ」と鋭くツッコまれると、つい「いやいや! こんな話で何マジになってんの!」とペラッペラの悪意で逃げる僕が好かれるわけない。
そんな日々を過ごしていけば、僕が取るに足らないオノマトペだと周りにバレてしまうわけで、結局今はもう一切口すら開けず、ペラペラの能力を使って薄く薄くなって、透明に見えるくらいに薄くなって、存在感をゼロにして、教室に溶け込むだけだ。
これで良いわけがない。
本当はクラスの中心人物になって、内申点をあげたいし、最終的にはもっと良い中学校に入学したいと思っている。
でもこういう対オノマトペ同士の内申点が本当に低くて、正直学業だけじゃ良い中学校には入れない。
今の時代、オノマトペの個性も大切にされていて、どう他のオノマトペたちと馴染むかの部分が重要視されている。
とは言え、逆転劇なんてものは作り物の世界だけで、現実は、現実に対応できなくなったオノマトペたちが脱落していくだけだ。
つまり僕は早々に出世レースから脱落した、弱いオノマトペということだ。
何で僕は生まれた時からペラペラなんだろうか。
もっと別のことに精を出したほうが良かったのだろうか。
でも僕はこのペラペラの使い方しかできなくて。ペラペラと適当なウンチクを垂れることしか脳が回らなくて。
同じペラペラ種族でも、外国語がペラペラなペラペラもいるらしいけども、僕の家系はそういう家系じゃなかった。
母親も父親もいつもテレビでワイドショーを見ては「あのオノマトペは昔不倫をしていた」とか「あのオノマトペは未成年に手を出したことあるんだよなぁ、噂だけで終わったけども」とか話して、薄いゴシップをペラペラと喋り合っている、生粋のゲス家系。
そんな両親のもとで育った僕は当然のように、そんなペラペラで、外国語の教育なんて受けたこともない。
本当にすごいオノマトペは自分で調べて勉強するらしいけども、それよりも、やっぱり僕も両親と同じで芸能界のゴシップをペラペラ喋っていたほうが楽しくて、優秀なペラペラには一生なれないんだろうなぁ、と思っている。
相変わらず僕は何者にもなれていない。
そんなある日、朝のホームルームの時間に学校の先生がこんな話をし始めた。
「今度小学生のオノマトペを集めて、友情リアリティーショーというモノを撮影するらしい。恋愛ではなくて小学生が対象だから友情、だな。興味があるオノマトペは先生に連絡するように」
と言ったところで僕と目が合った先生が、
「お、ペラペラ、やってみるか?」
するとクラスメイトたちの目が一斉にこっちを向いて、僕は即座に、
「いやいや! そんな格下がやるような番組には参加しませんよぉっ!」
とペラペラと口から言葉が溢れ出た。
すると先生に、
「そんな、参加しようと思う子が参加しづらくなるような言い方はやめなさい」
と怒られてしまった。
いつもこうだ。自分でもこんな言い方良くなかったって分かっている。
でも自分のプライドを優先させて、こんな良くない言い方をしてしまった。
言った瞬間から自分で反省している、分かっている、分かっているんだ、こんなワイドショーにずっと毒づいているようなオノマトペが好かれるはずがないって。
朝のホームルームも終わり、クラスメイトたちは授業の合間にまた会話している。
僕は一人で机に突っ伏して考える。
友情リアリティーショー……そこで自分の人格ごとやり直すか……というかそういうところで一旦トップを獲って、勝ち癖をつけてからまた現実の教室に戻ってくるのもアリか……多分友情リアリティーショーに参加する連中なんてハミ出しモノばっかりで、上手く言い負かすことだってできるはずだ……とまた良くない言語で思考してしまっている。
でも実際にそうだと思うんだ。本当に一回、勝ち癖をちゃんと同世代のオノマトペ相手に作らないと、このままダウナー街道まっしぐらじゃないか?
ここは一念発起して、その友情リアリティーショーでリーダーシップをとって、一番になって勝ち癖を付けよう。
僕は一限目~四限目の授業を普通に受けてから、昼休みに先生がいる職員室へ行って、友情リアリティーショーに興味があるという旨を伝えた。
先生は何だか嬉しそうに、背中を押してくれた。
そこから話はトントン拍子に進んでいき、僕は合宿という形で友情リアリティーショーに一週間参加することになり、小学校的には留学扱いになり、これからはこの友情リアリティーショーの校舎(廃校になったばかりの学校を借りているらしい)で生活することになった。
話によると先生は友情リアリティーショーのスタッフと知り合いで、あんまり参加者は多くなりそうにないから、誰か誘ってほしいと言われていたらしい。
一応この友情リアリティーショーは児童の研究者が監修しているらしい。また資料として、分かりやすい状態で残すため、友情リアリティーショーという形式にしたという話だ。
その校舎へは担任の先生が運転する車に他は僕だけで乗せられて、校門におろされた。校門にはスタッフがいて、まず体育館に連れていかれて、そこにはイスが八脚置かれていた。
僕が最初だったらしく、適当にイスへ座っていると、1オノマトペずつスタッフから招かれて、次々にこの友情リアリティーショーに参加するオノマトペが席に着いていった。
僕は全員に「よろしくね」と挨拶したんだけども、睨むだけの子や、小声で何か吐き捨てた子や、俯きがちに見てきただけの子、そんなんばっかだなと思ったら急に「よろしく! 俺はワクワクね!」と言ってくる子もいたり、じゃあそういう子もいるんだと思ったら「もう良い顔し始めて」と嫌なことを言ってくる子や、小さく会釈をする子、最後に来た子は「OK!」とサムアップするような子だった。
本当タイプがそれぞれで、一体これからどうなるんだろうとちょっと不安になってしまった。
スタッフが、
「では最初にイスに座った順に自己紹介をお願いします」
と促してきたので、僕から自己紹介することにした。
「僕はペラペラと言います。よろしくお願いします」
と頭をさげると、二人すぐに拍手してくれて、後から遅れるようにもう一人拍手してくれた。
次は僕を睨みつけてきた子だ。その子はイスにふんぞり返っていたわけだけども、ゆっくり重い腰をあげて、こう言った。
「おれはドスドス」
そう言ってすぐにまたイスに座った。
まあ僕もそれくらいの情報量しか喋っていないけども、さすがに協調性が無さ過ぎると思った。本当に自ら友情リアリティーショーに参加しようと思ったんだよな? 友情なんだから、ある程度は愛想良くしたほうがいいはずなのに。
その次は何か小声で吐き捨てた子だ。
だるそうに立ち上がると、
「小生はチクチクです」
とだけ言って座った。というか一人称の癖すごっ。今時、小生が一人称の小学生なんていないでしょ。
次は俯きがちにこちらを見ただけの子だ。
おどおどしながら立ち上がると、
「ぼくはヌメヌメです……ちょっと汗かきですが……ちゃんとお風呂に入っているので、ぁ、ぁ、余計なこと言っちゃった……」
と恥ずかしそうに俯きながらまた席に着いた。相変わらずメンバーの癖強っ。
次は僕の挨拶に「よろしく!」と快活に対応してくれたワクワクだ。その時に名乗ったからこの子の名前は分かる。
ワクワクはスクッと元気に立ち上がり、
「よろしく! 俺はワクワク! みんな調子どうっ?」
と両腕を広げたので、僕はポカンとしてしまうと、最後にやって来て「OK!」と言った子が、
「吾輩は超元気!」
とサムアップし、ワクワクとその子は笑顔で手を振り合いつつ、また席に着いた。
というかそうか、何か声を出したほうが良かったよな……そっちのほうが場を掌握ができるよなぁ……しまった、この2オノマトペに仕切られるかもと内心焦ってきた。
次は嫌なことを言ってきた子だ。明らかに舌打ちの音を鳴らしながら立ち上がったその子に僕は正直目を丸くしてしまった。そんな態度、絶対大丈夫じゃないから。
「我はガリガリ。馴れ合うつもりはないんで」
と言って座った。いや友情リアリティーショーに参加しておいて、馴れ合う気は無いってどういうこと? 馴れ合うことこそ友達の始まりじゃないの? このオノマトペはさすがによく分からない。
次は小さく会釈で返してくれた子だ。やっぱりちょっとくらいは友好的なオノマトペのほうがいいなぁ、と僕が思考している最中もずっと座っていて、何だろうと思っていると、どうやら動作がすごく遅いらしく、やっと立ち上がって、からもちょっと間をとってから喋り出した。
「トロトロは、トロトロです。よろしく、お願いします」
そう言ったあともちょっと挙動不審そうに周りを見てから腰をおろし始めた。礼儀正しそうだけども、こんだけ遅いのは問題だなぁ。
最後に「OK!」とサムアップし、またさっきワクワクの時に「超元気!」と言った子はトロトロが座った瞬間に立ち上がり、
「吾輩はキラキラ! 目立つことが何でも好きだ! よろしくな!」
とまた元気にサムアップした。僕の視界には一緒になってサムアップするワクワクの姿があって、あぁ、何かそういう反応したほうが良かったかもと即座に反省してしまうと、ガリガリと名乗った子が「ウゼェ」と言った。
確か馴れ合いはしないと言った子だ。何で『ウゼェ』だなんてこと言うのかなと思っていると、ワクワクが何だか嬉しそうにこう言った。
「そのウゼェってどういうつもりで言ったの? ね! ね! 何で言ったのっ?」
とまさかの掘り下げを行ない、それはガリガリにとっても、サムアップしたキラキラにとっても痛い行為じゃないか? と、ペラペラながらハラハラしてしまうと、そう聞かれたガリガリは「それが一番ウゼェ」と真っ当な回答をしたわけだけども、ワクワクは前のめりで、
「どういうことかな? どういうことかな? それも!」
と聞いていて、メンタルが強過ぎると思った。
そのタイミングで、ドスドスがデカい声で、
「うるせぇ! 黙れよ! マジで!」
とドスの利いた声でそう言うと、ワクワクもちょっと委縮するように肩をすぼめた。
このやり取りにヌメヌメは異常に額に汗をかき、チクチクは何か小声で言っているようだった。
するとさっきまで黙る感じだったワクワクがまた喋り出した。しかも僕に向かって。
「そう言えばペラペラはさ! 小学校ではどんな感じなのっ? もしかしたら存在感ペラッペラだったりするぅー! ウフフ!」
まさかそんなイジられるようなことを言われるとは思わなかった、というこれは危機だ。このままイジられキャラになったらリーダーシップをとるなんて夢のまた夢だ。ここは全員からイジられる前にワクワクをイジり返して主導権を握らなければならない。
「そんなワクワクこそ質問ばかりで、小学校ではウザがられていないのっ?」
と軽く鼻で笑うように言って”イジっていますよ”ということを全開にして聞くと、ワクワクが答える前にガリガリが、
「本当そりゃそうだよな、ウザいよな」
と同調してくれて、これは良い風吹いていると思った。
ワクワクは屈託の無い笑顔で、
「もうバレたー! そうそう俺ってすぐ質問しちゃってウザがられるんだよねぇ!」
と言ったところで、ドスドスが、
「マジでウゼェよ、オマエ」
と追撃してくれて助かる。なんとか僕をイジる流れは無くなって、そこからワクワクが集中攻撃される流れになった。
正直そういうイジる・イジられるとか、そういうのあんま良くないんだけども、オノマトペたちが存在する限り、そうなるのは当然の理だからなぁ。
ただ段々ワクワクへのイジリというか攻めが強くなってきたので、スタッフが止めに入り、
「それでは早速企画に参りましょう」
と言った。当のワクワクはそんな喰らっている感じじゃないのが、なんというか本当にメンタル強いんだなぁ、と思った。
僕がもしワクワクが今喰らったくらいの集中攻撃を喰らったら、もう立ち直れないかも。
本当にガリガリがメンタルを削るようなことを言って、ドスドスがドスの利いた声で怒り、時折聞こえてくるチクチクの囁き悪口が痛かったと思う。
スタッフがみんなを立ち上がるように促すと、トロトロ以外はすぐにスクッと立って、トロトロはゆっくり腰をあげている。
スタッフが、
「では、ツーショットトークに参りましょう。この企画ではまず一対一でトークします。二分経ったらすぐにメンバーを入れ替えてを繰り返して、全員と二分間一対一でトークするという企画です」
企画というかオノマトペなりを知るには一番良い行動って感じだ。
でも僕、ドスドスやチクチク、そしてガリガリとは一対一で喋りたくないかもしれない。なんて癖の強いメンバーが集まったんだ。というか攻撃的? というかさ。
・
・【01 ペラペラ】
・
いつの間にか肩身が狭い思いをしてしまうことは常々あって、今日も気持ちが萎み過ぎて、ペラペラの薄い紙のような状態に変化して、話題にあがらないようにじっとしていた。
授業以外、教室ではいないモノとして過ごしている僕。いつもこうなってしまうんだ。
最初は調子良く喋って、クラスの中心人物みたいになれるのに、いつしか僕が薄っぺらい”オノマトペ”だということがバレてしまい、若干クラスで浮くどころか、薄っすら嫌われてしまう。
そりゃペラペラのウンチクを語って、周りから「それただの陰謀論だよ」と鋭くツッコまれると、つい「いやいや! こんな話で何マジになってんの!」とペラッペラの悪意で逃げる僕が好かれるわけない。
そんな日々を過ごしていけば、僕が取るに足らないオノマトペだと周りにバレてしまうわけで、結局今はもう一切口すら開けず、ペラペラの能力を使って薄く薄くなって、透明に見えるくらいに薄くなって、存在感をゼロにして、教室に溶け込むだけだ。
これで良いわけがない。
本当はクラスの中心人物になって、内申点をあげたいし、最終的にはもっと良い中学校に入学したいと思っている。
でもこういう対オノマトペ同士の内申点が本当に低くて、正直学業だけじゃ良い中学校には入れない。
今の時代、オノマトペの個性も大切にされていて、どう他のオノマトペたちと馴染むかの部分が重要視されている。
とは言え、逆転劇なんてものは作り物の世界だけで、現実は、現実に対応できなくなったオノマトペたちが脱落していくだけだ。
つまり僕は早々に出世レースから脱落した、弱いオノマトペということだ。
何で僕は生まれた時からペラペラなんだろうか。
もっと別のことに精を出したほうが良かったのだろうか。
でも僕はこのペラペラの使い方しかできなくて。ペラペラと適当なウンチクを垂れることしか脳が回らなくて。
同じペラペラ種族でも、外国語がペラペラなペラペラもいるらしいけども、僕の家系はそういう家系じゃなかった。
母親も父親もいつもテレビでワイドショーを見ては「あのオノマトペは昔不倫をしていた」とか「あのオノマトペは未成年に手を出したことあるんだよなぁ、噂だけで終わったけども」とか話して、薄いゴシップをペラペラと喋り合っている、生粋のゲス家系。
そんな両親のもとで育った僕は当然のように、そんなペラペラで、外国語の教育なんて受けたこともない。
本当にすごいオノマトペは自分で調べて勉強するらしいけども、それよりも、やっぱり僕も両親と同じで芸能界のゴシップをペラペラ喋っていたほうが楽しくて、優秀なペラペラには一生なれないんだろうなぁ、と思っている。
相変わらず僕は何者にもなれていない。
そんなある日、朝のホームルームの時間に学校の先生がこんな話をし始めた。
「今度小学生のオノマトペを集めて、友情リアリティーショーというモノを撮影するらしい。恋愛ではなくて小学生が対象だから友情、だな。興味があるオノマトペは先生に連絡するように」
と言ったところで僕と目が合った先生が、
「お、ペラペラ、やってみるか?」
するとクラスメイトたちの目が一斉にこっちを向いて、僕は即座に、
「いやいや! そんな格下がやるような番組には参加しませんよぉっ!」
とペラペラと口から言葉が溢れ出た。
すると先生に、
「そんな、参加しようと思う子が参加しづらくなるような言い方はやめなさい」
と怒られてしまった。
いつもこうだ。自分でもこんな言い方良くなかったって分かっている。
でも自分のプライドを優先させて、こんな良くない言い方をしてしまった。
言った瞬間から自分で反省している、分かっている、分かっているんだ、こんなワイドショーにずっと毒づいているようなオノマトペが好かれるはずがないって。
朝のホームルームも終わり、クラスメイトたちは授業の合間にまた会話している。
僕は一人で机に突っ伏して考える。
友情リアリティーショー……そこで自分の人格ごとやり直すか……というかそういうところで一旦トップを獲って、勝ち癖をつけてからまた現実の教室に戻ってくるのもアリか……多分友情リアリティーショーに参加する連中なんてハミ出しモノばっかりで、上手く言い負かすことだってできるはずだ……とまた良くない言語で思考してしまっている。
でも実際にそうだと思うんだ。本当に一回、勝ち癖をちゃんと同世代のオノマトペ相手に作らないと、このままダウナー街道まっしぐらじゃないか?
ここは一念発起して、その友情リアリティーショーでリーダーシップをとって、一番になって勝ち癖を付けよう。
僕は一限目~四限目の授業を普通に受けてから、昼休みに先生がいる職員室へ行って、友情リアリティーショーに興味があるという旨を伝えた。
先生は何だか嬉しそうに、背中を押してくれた。
そこから話はトントン拍子に進んでいき、僕は合宿という形で友情リアリティーショーに一週間参加することになり、小学校的には留学扱いになり、これからはこの友情リアリティーショーの校舎(廃校になったばかりの学校を借りているらしい)で生活することになった。
話によると先生は友情リアリティーショーのスタッフと知り合いで、あんまり参加者は多くなりそうにないから、誰か誘ってほしいと言われていたらしい。
一応この友情リアリティーショーは児童の研究者が監修しているらしい。また資料として、分かりやすい状態で残すため、友情リアリティーショーという形式にしたという話だ。
その校舎へは担任の先生が運転する車に他は僕だけで乗せられて、校門におろされた。校門にはスタッフがいて、まず体育館に連れていかれて、そこにはイスが八脚置かれていた。
僕が最初だったらしく、適当にイスへ座っていると、1オノマトペずつスタッフから招かれて、次々にこの友情リアリティーショーに参加するオノマトペが席に着いていった。
僕は全員に「よろしくね」と挨拶したんだけども、睨むだけの子や、小声で何か吐き捨てた子や、俯きがちに見てきただけの子、そんなんばっかだなと思ったら急に「よろしく! 俺はワクワクね!」と言ってくる子もいたり、じゃあそういう子もいるんだと思ったら「もう良い顔し始めて」と嫌なことを言ってくる子や、小さく会釈をする子、最後に来た子は「OK!」とサムアップするような子だった。
本当タイプがそれぞれで、一体これからどうなるんだろうとちょっと不安になってしまった。
スタッフが、
「では最初にイスに座った順に自己紹介をお願いします」
と促してきたので、僕から自己紹介することにした。
「僕はペラペラと言います。よろしくお願いします」
と頭をさげると、二人すぐに拍手してくれて、後から遅れるようにもう一人拍手してくれた。
次は僕を睨みつけてきた子だ。その子はイスにふんぞり返っていたわけだけども、ゆっくり重い腰をあげて、こう言った。
「おれはドスドス」
そう言ってすぐにまたイスに座った。
まあ僕もそれくらいの情報量しか喋っていないけども、さすがに協調性が無さ過ぎると思った。本当に自ら友情リアリティーショーに参加しようと思ったんだよな? 友情なんだから、ある程度は愛想良くしたほうがいいはずなのに。
その次は何か小声で吐き捨てた子だ。
だるそうに立ち上がると、
「小生はチクチクです」
とだけ言って座った。というか一人称の癖すごっ。今時、小生が一人称の小学生なんていないでしょ。
次は俯きがちにこちらを見ただけの子だ。
おどおどしながら立ち上がると、
「ぼくはヌメヌメです……ちょっと汗かきですが……ちゃんとお風呂に入っているので、ぁ、ぁ、余計なこと言っちゃった……」
と恥ずかしそうに俯きながらまた席に着いた。相変わらずメンバーの癖強っ。
次は僕の挨拶に「よろしく!」と快活に対応してくれたワクワクだ。その時に名乗ったからこの子の名前は分かる。
ワクワクはスクッと元気に立ち上がり、
「よろしく! 俺はワクワク! みんな調子どうっ?」
と両腕を広げたので、僕はポカンとしてしまうと、最後にやって来て「OK!」と言った子が、
「吾輩は超元気!」
とサムアップし、ワクワクとその子は笑顔で手を振り合いつつ、また席に着いた。
というかそうか、何か声を出したほうが良かったよな……そっちのほうが場を掌握ができるよなぁ……しまった、この2オノマトペに仕切られるかもと内心焦ってきた。
次は嫌なことを言ってきた子だ。明らかに舌打ちの音を鳴らしながら立ち上がったその子に僕は正直目を丸くしてしまった。そんな態度、絶対大丈夫じゃないから。
「我はガリガリ。馴れ合うつもりはないんで」
と言って座った。いや友情リアリティーショーに参加しておいて、馴れ合う気は無いってどういうこと? 馴れ合うことこそ友達の始まりじゃないの? このオノマトペはさすがによく分からない。
次は小さく会釈で返してくれた子だ。やっぱりちょっとくらいは友好的なオノマトペのほうがいいなぁ、と僕が思考している最中もずっと座っていて、何だろうと思っていると、どうやら動作がすごく遅いらしく、やっと立ち上がって、からもちょっと間をとってから喋り出した。
「トロトロは、トロトロです。よろしく、お願いします」
そう言ったあともちょっと挙動不審そうに周りを見てから腰をおろし始めた。礼儀正しそうだけども、こんだけ遅いのは問題だなぁ。
最後に「OK!」とサムアップし、またさっきワクワクの時に「超元気!」と言った子はトロトロが座った瞬間に立ち上がり、
「吾輩はキラキラ! 目立つことが何でも好きだ! よろしくな!」
とまた元気にサムアップした。僕の視界には一緒になってサムアップするワクワクの姿があって、あぁ、何かそういう反応したほうが良かったかもと即座に反省してしまうと、ガリガリと名乗った子が「ウゼェ」と言った。
確か馴れ合いはしないと言った子だ。何で『ウゼェ』だなんてこと言うのかなと思っていると、ワクワクが何だか嬉しそうにこう言った。
「そのウゼェってどういうつもりで言ったの? ね! ね! 何で言ったのっ?」
とまさかの掘り下げを行ない、それはガリガリにとっても、サムアップしたキラキラにとっても痛い行為じゃないか? と、ペラペラながらハラハラしてしまうと、そう聞かれたガリガリは「それが一番ウゼェ」と真っ当な回答をしたわけだけども、ワクワクは前のめりで、
「どういうことかな? どういうことかな? それも!」
と聞いていて、メンタルが強過ぎると思った。
そのタイミングで、ドスドスがデカい声で、
「うるせぇ! 黙れよ! マジで!」
とドスの利いた声でそう言うと、ワクワクもちょっと委縮するように肩をすぼめた。
このやり取りにヌメヌメは異常に額に汗をかき、チクチクは何か小声で言っているようだった。
するとさっきまで黙る感じだったワクワクがまた喋り出した。しかも僕に向かって。
「そう言えばペラペラはさ! 小学校ではどんな感じなのっ? もしかしたら存在感ペラッペラだったりするぅー! ウフフ!」
まさかそんなイジられるようなことを言われるとは思わなかった、というこれは危機だ。このままイジられキャラになったらリーダーシップをとるなんて夢のまた夢だ。ここは全員からイジられる前にワクワクをイジり返して主導権を握らなければならない。
「そんなワクワクこそ質問ばかりで、小学校ではウザがられていないのっ?」
と軽く鼻で笑うように言って”イジっていますよ”ということを全開にして聞くと、ワクワクが答える前にガリガリが、
「本当そりゃそうだよな、ウザいよな」
と同調してくれて、これは良い風吹いていると思った。
ワクワクは屈託の無い笑顔で、
「もうバレたー! そうそう俺ってすぐ質問しちゃってウザがられるんだよねぇ!」
と言ったところで、ドスドスが、
「マジでウゼェよ、オマエ」
と追撃してくれて助かる。なんとか僕をイジる流れは無くなって、そこからワクワクが集中攻撃される流れになった。
正直そういうイジる・イジられるとか、そういうのあんま良くないんだけども、オノマトペたちが存在する限り、そうなるのは当然の理だからなぁ。
ただ段々ワクワクへのイジリというか攻めが強くなってきたので、スタッフが止めに入り、
「それでは早速企画に参りましょう」
と言った。当のワクワクはそんな喰らっている感じじゃないのが、なんというか本当にメンタル強いんだなぁ、と思った。
僕がもしワクワクが今喰らったくらいの集中攻撃を喰らったら、もう立ち直れないかも。
本当にガリガリがメンタルを削るようなことを言って、ドスドスがドスの利いた声で怒り、時折聞こえてくるチクチクの囁き悪口が痛かったと思う。
スタッフがみんなを立ち上がるように促すと、トロトロ以外はすぐにスクッと立って、トロトロはゆっくり腰をあげている。
スタッフが、
「では、ツーショットトークに参りましょう。この企画ではまず一対一でトークします。二分経ったらすぐにメンバーを入れ替えてを繰り返して、全員と二分間一対一でトークするという企画です」
企画というかオノマトペなりを知るには一番良い行動って感じだ。
でも僕、ドスドスやチクチク、そしてガリガリとは一対一で喋りたくないかもしれない。なんて癖の強いメンバーが集まったんだ。というか攻撃的? というかさ。
< 1 / 9 >