シェヘラザードに捧げる物語
「今回の件で目が覚めました」
「ホテルへの訴訟は撤回いたします」
その言葉に川島さんと顔を見合わせる。
「本当ですか……!?」
「はい、ご迷惑をおかけしました」
今度は美咲さんが頭を下げた。普段着らしいワンピースにはそぐわない、安っぽいサンダルが目立っている。
……春日野さんが買ったんだろうな。
「柴田さん、秀樹も……両親が卑怯な真似をして、どうお詫びすればいいか……」
「違う! そもそも俺が不法侵入しなければ……!」
あわあわと手を振る照屋さんに、私と川島さんは「不法侵入?」と訝しげな視線を向けた。
「……話すと長くなるので、ちょっと今は……」
大賀くんが目頭を揉みながら言うものだから、私たちは原嶋さんたちが話すままに任せる。
「ううん、あのおかげで外に出られたの」
「あれの? どこらが?」
「壁伝いに二階にきたでしょう? あんな感じで一階までいけるかなって」