n回目のリフレイン
「あの後はなにもなかった?」
「うん、なかったよ……心配してくれてありがとう」
顔が見れない。声が柔らかくて優しいだけにいたたまれなくて、走りだそうとする足を押さえこむだけで精一杯だ。
できれば放っておいてほしかった。そんな身勝手な思いがわきあがってしまう。
「これから予定ある?」
「ううん、どうして?」
「今日も遊びたくて」
それはどういうつもりで?
あのときのことを忘れたの?
「ああ、海じゃなくて秘密基地」
「秘密基地?」
秘密基地ってあの……秘密基地?
小学校に通う前、茉耶と雑木林で作ったことを思いだした。ダンボールでできたちゃちなそれは、台風で流されてしまったけど楽しかった。
「工場の跡地があるんだ。そこに作ったやつ」
「そう……遠い?」
「ううん、ここから十五分くらい」
私は顔を上げて矢島くんを見た。初めて会ったときと変わらず、穏やかな目をしている。