キューピットが恋しちゃダメなのに
ෆ‪落ちていくෆ‪


私キューピット、エナ。

毎日人間達を恋に溺れさせる――って言っても悪者なんかじゃないからね?

その後は人間しだい。

キリキリって弓を引く。

何十回、何百回と繰り返してきた動き。

でも、誰かの人生を決めることだから緊張する。

震える手を落ち着かせてから、もう一度狙いを定める。

それがキラって地上に消えていくのをみると、すごく安心する。



「エーナ!」

「わっ、びっくりしたー。なんだルイか」

「そこはきゃあ♡♡ルイ様だ///だろ」



同い年のルイはみんなの人気者、というかチャラ男。

キリッとしたまゆと反対に、少したれた大きな目。

スっと通った鼻筋とセンターでわけられた薄茶色の髪は、白い肌に柔らかい影を落としている。

こんなに整ってたら女の子達も恋に堕ちるよね。

落ちてるから堕ちるのかなぁ・・。



「・・エナ?」



いけない、またぼけーっとしちゃってた。



「そうそう、何か用?」

「神様が次のパズルを発表するから神殿に来いって」



その言葉で、一気に頭が働きだした。

神様の考えた恋を私達が繋げてるんだ、と思うと、力が湧いてくる。



「ほんとに!?急がなきゃ!」

「嬉しそうだな」

「うんっ。この時間大好きっ」



一瞬、ルイの顔が赤くなった気がしたけど気のせい、だよ、ね?

熱でもあるのかな、そうだったら心配だな。



「・・俺の背中に乗れよ。その方がはやくつけるから」

「い、いいよいいよ、自分でいけるしー!!」



急にそんな変なこと言われたら固まっちゃう。

ぎぎっと今にもきしみそうな首を無理やり前に向ける。

今、絶対私の顔真っ赤だよね・・!



「じゃー神殿まで競走だから!よぉーいスタート!!」

「それは反則だろっっ」



本気の目になったルイをみて、私も一気に加速する。

景色とは逆にこの時間がゆっくり進んでくれないかな、とふいに思った。

𐐪𐑂⟡.· ⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯ ⟡.·𐐪𐑂

「悔しいーー!!」



私は結局、ルイに負けてしまった。



「俺に勝つなんて1億年早い!」

「そんなこと・・ないはず、だし」



なにか言いかけたルイの口が閉じる。



「全員集まったようですね」

「では、恋想会をはじめる」



人の恋の運命を発表する会、「恋想会」。

進めるのは恋の女神と運命の男神。

美男美女の2人の神様は、目があうとたおやかに微笑みあった。



「今日はこちらよ。間違えないようにじっくりみること。」



本当に2人は絵になりそう、じゃなくて組み合わせみなきゃ。

慌てて近くにあった紙を見上げる。



「覚えた者から順番に用意に入ってくれ。よろしく頼んだぞ」

「「「頼まれました!!」」」



私は周りに負けじとお腹の中から声を出した。

𐐪𐑂⟡.· ⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯ ⟡.·𐐪𐑂

キューピットが住む寮に帰るか、仕事を済ますか、どっちにしよう。

今日1番目の担当は、日本のとある場所。



「京極 翔奏(きょうごく・かなた)と星奈 桜桃(ほしな・おと)。きれいな名前・・」

「エナ!今日の仕事一緒にやろーぜ。」

「もちろんだよルイ。でも他の子は?」

「今日はいーの。それともやっぱダメ?」



恐る恐る後ろを振り返ると、他の女の子達の視線が怖い。

男の子も何人かみている気が――。



「エナ!?」



耐えられなくなって、私は戸惑うルイの手を握って雲の端の仕事場まで走りだした。



「ルイ!?」



次は私がびっくりする番だった。

ルイが、手をぎゅっと握り返したから。

スピードが緩んだ私を引っ張るように走る彼の手は熱くて。

私もそこからじわじわと熱くなっていく。



「ルイ・・」



普段は他の女の子と明るく喋るくせに、私の前では口が重たいルイ。



「私の傍にいてよ・・」

「着いた!!」



うっかり出た恥ずかしい言葉は、ルイの声にかき消された。

よかった・・でも聞かれなかったのがちょっと残念なようなきも、する。

それに手、離れちゃったな。



「ぷはっ、エナひとりで百面相してる」

「えっ」



慌てて頬をおさえた私の両手に、再び彼の手が重なる。

ルイの目の中に映るのは私だけ。静寂に吸い込まれそう――。



「エナって、面白い!!」

「な、なにそれ!?もうっ私仕事するからね」

「なんだよ〜」



近くにあった矢と弓の中から直感で1本ずつ選ぶ。

仕事になると、もう周りは目に入らない。

力を抜いて、キリキリキリ、そう、私はこの音を



「えっ?」



強い風が吹いた。

体が浮いた。

片膝をついたルイと私に伸ばされた手がどんどん遠くなっていく。

何を叫んでいるの。

まったくわからない、きこえないよ。

わかった。

落ちてるんだ――落ちてる!?私、落ちてるっっ。

怖いよ・・

私はそのまま意識を手放した。




ෆ‪堕ちた。ෆ‪


𓂃 Seid,Kanata


俺は高校1年生、京極翔奏。

入学して2週間がたち、無事にできた友達となんだかんだ一緒にいる。



「かーなたっ、一緒に帰ろ?」

「桜桃。来てくれたのか」

「だって翔奏、遅いだもん」

「お、翔奏の彼女だ」

「お前らなぁ・・だから桜桃は彼女じゃないって」

「でも桜桃ちゃんとは赤ちゃんの頃からの仲なんだろ?」

「それはそうだけど、ってか桜桃ももうちょっと否定しろ」



隣のクラスの星奈桜桃は物心つく前から気づいたら隣にいた。

親どうしもともと仲が良く、自然と俺たちの思い出も多くなった。

両親共働き、ひとりっ子。

桜桃は今ではもう泣かないけれど、俺は弱いままだ。



「・・帰るか」

「うんっ」



ニヤニヤする友達を人睨みしてから、カバンを肩にかつぐ。

真新しい制服にシワがよってしまったのが少し悲しかった。

𐐪𐑂⟡.· ⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯ ⟡.·𐐪𐑂
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