キューピットが恋しちゃダメなのに
「翔奏は人気者だからなー」

「なんでかなぁ〜」



ルイみたいな優しくてイケメンで一緒にいて楽しい人が人気ならわかるんだけどな。



「翔奏、前はバレーしてたんだよね」



ぽつり、とこぼした桜桃ちゃんのつぶやきが教室のざわめきが遠ざかっていく。



「けど、なんのためのバレーだって言って辞めちゃった」



明るいトーンで言うそのセリフは、誰に言うともなく消えていった。



「エースだったんだ。すごいでしょ」

「桜桃、また変なこと吹き込んだだろ」

「翔奏・・!」



ポンっと肩に触れた手がこしょばくて、思わず笑いそうになる。



「私なにもいってないよ!!ね、エナちゃん」

「この前も“翔奏ネコが好きってきいた”とか言って買ってきたの猫耳カチューシャだぞ。俺のお金返せ」

「あ、バレた?」



ちろっと舌を出す桜桃ちゃんも翔奏も、もう私の事なんてみえてない。

笑いあう2人をみているとまた心に雲が立ち込めてきて、思わず教室を出る。

行くあてもなくブラブラ歩いているとはぁ、とため息が出てきた。

人間界も難しいことばっかりでやんなっちゃうなぁ。



「ため息ばっかりついてると幸せが逃げる」

「か、翔奏!!」



翔奏は肩で息をしながら少し笑った。

追いかけてきてくれたんだ。



「一緒に弁当食べようぜ」



胸がキュンっと音をたてたのは気のせいじゃなかった。
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