【完】きみは硝子のゼラニウム




私を守ってくれる大きな背中も、包み込むみたいにあったかい手も、陽だまりみたいな匂いも、優しく目を細めて笑う顔も、ひなって甘く呼ぶ声も、全部、全部、失いたくないものだった。



気づけば、こんなにも胸の奥に根を張っていて、どうやったって抜けない。



私の心の中は、いらないものばかりだった。

罪悪感とか、強がりとか、ひとりで平気だっていう嘘とか。重たくて、苦しくて、それでもそれで自分を守ってきた。

誰も入れないように、傷つかないように。



でも、やっと見つけた。


この気持ちは、誰かに決めてもらうものじゃない。


大事にしたい。


この気持ちは、自分で、大切にしたい。



「…尋くん…今日は、寝ないで、一緒に映画見てくれる?朝まで……一緒にいてくれる?」


「はは、いいよ。何本見れるかチャレンジな」



尋くんは、かわいくてたまんない、なんて軽く言いながら、私の頭ごとぎゅっと抱きしめてきた。

大きな胸に顔が埋まって、陽だまりみたいな匂いに包まれる。

耳元で聞こえる少し早い鼓動と、背中に回された腕の強さが、私を、ひとりじゃないって教えてくれる。



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