きみは硝子のゼラニウム




「ひな、行くよ」


「えっ…!?」



次の瞬間、そのままの体勢でくるりと方向を変えられる。一瞬視界が揺れて、慌てて足を動かす。



「ひ、尋くんっ、急にどうしたんですか?歩きにくいし、恥ずかしいですっ…!!」



振り返る余裕もないまま数歩進んで、それでも気になって、ちら、と後ろを盗み見た。

尋くんの腕に視界を遮られてよく見えなかったけれど、それでもはっきり分かった。金森くんの、苦しそうな顔。



金森くんが、どうしてあんな顔をしたのか、何を言いかけたのか、正直これっぽっちも分からないけれど、金森くんは、私みたいな人間を放っておけないタイプだ。

だから、今回だってきっと、尋くんと一緒にいる私を、無意識に心配してくれたんだろう。


学校以外で関わることなんて、今後もないだろうし。




繁華街の真ん中で、肩を組まれたまま歩くなんて、私にはハードルが高すぎる。周りの視線が全部こっちに向いている気がして、足がもつれそうになる。


こんなの、心臓がもたないよ。


すると尋くんは、ふっと腕を離して、「悪い」と短く呟いた。


急に距離が空いて、さっきまで触れていた体温がなくなると、少しだけ寂しいと思ってしまう自分がいる。公衆の面前であんなふうにくっついて歩くのはどうなの、って冷静な自分もちゃんといるのに、それでも。


< 162 / 301 >

この作品をシェア

pagetop