【完】きみは硝子のゼラニウム

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寝る直前、部屋の電気を消して、ベッドの上で仰向けになったまま、スマホを顔の真上に掲げる。

落としたら痛いって分かってるのに、そんなことどうでもよくなるくらい、心臓のほうがうるさい。


何度も打っては消して、また打ち直す文字。



〈8月に入ったら、ひまわり畑行きませんか〉



たったそれだけの一文なのに、指先が震える。

自分から誘うなんて、初めてで、こんなに勇気がいるなんて思わなかった。

送信ボタンの手前で止まっては、アルバムを開いて、さっきSNSで流れてきて咄嗟に保存した、ひまわり畑のポスターを見る。

トーク画面とポスターを交互に開いては閉じて、また開いて。気づけばもうかれこれ1時間。時計は23時を回っている。


もしかしたら、もう寝てるかもしれない。既読がつかなかったらどうしよう。いや、それよりも、既読がついて、少し間が空いて、それから〈ごめん、無理〉なんて来たら……。


そこまで考えて、ぶんぶんと頭を振る。



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