きみは硝子のゼラニウム




だから、ついかっこつける。余裕あるふりをする。平気そうな顔をする。

ひなと話してるときだって、内心はいつもドキドキしてる。

少し距離が近づくだけで心臓がうるさくなるし、笑いかけられるだけで頭の中がちょっと真っ白になる。


それでも、そんなかっこ悪いところは絶対見せたくない。死んでも見せたくない。だから平然とした顔をして、余裕そうな声で話して、全部隠してるだけ。



だけど実際は、ひなの一挙一動に振り回されてる。

笑う顔も、少し困った顔も、真剣に花を束ねてる横顔も、泣いてる顔も、全部がいちいち俺を夢中にさせてくる。


……これを振り回されてるって言うなら。



「……そっか。振り回されてんのか、俺」



ぽつりと呟くと、自分でもなんだか妙に納得してしまった。

そうか、そういうことか。


理解した瞬間、なぜか笑いがこみ上げてくる。



「なに笑ってんだよ、変な奴」



隣で呆れた声がするけど、そんなこともうどうでもよかった。



「おーい、尋。聞いてる?」



適当に「んー」とか返事をしながら、俺はポケットの中のスマホをもう一度軽く握った。


悪いけど、俺は今、ひなのことで忙しーの。



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