きみは硝子のゼラニウム




お風呂から上がると、尋くんはソファに座ってテレビを見ていた。

その後ろ姿を見て、私はこの家にひとりじゃないんだ、と改めて安心する。



「…尋くん。疲れたよね?」



そっと隣に腰を下ろして声をかけると、尋くんはびくっと肩を揺らして、ゆっくり私のほうを見た。

その瞬間、まるで時間が止まったみたいに目を大きく見開いて固まってしまう。


え、なに…どうしたの?そんなに驚くようなことしたかな。

思わず自分の行動を振り返るけど、思い当たることなんてなくて、胸の奥がざわざわして落ち着かない。



「尋くん?」



恐る恐るもう一度名前を呼ぶと、彼は我に返ったみたいに「あ…いや、えー…」と歯切れの悪い声を漏らしたあと、少し顔を赤くして視線を逸らした。



「風呂あがり、かなりやばい」



ぽつりと落とされた言葉に、私はきょとんとしてしまう。



「ん?」



やばいって、なにが…?

尋くんはそれ以上何も言わず、そっぽを向いたまま、ふーっと大きく息を吐き出している。

その横顔はどこか困っているようにも見えて、余計に不安が募っていく。


や、やばいってどういう意味…?もしかして、私の顔に何かついてるとか?髪、変だった?それとも…すっぴんだから…?



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