【完】きみは硝子のゼラニウム
店に戻ると、なぜか当たり前みたいな顔をして隣に立っている尋くんを見て、店長は一瞬だけ意味深に笑った。
それから私に向かって「お昼休憩、行っておいで」と優しく言う。
「じゃあ、これで」
私はぎこちなく尋くんにペコリと頭を下げて、奥のスタッフルームへ向かおうとした。
その瞬間だった。
グイッと、腕が強く引かれる。
「まてまてまて。俺を置いていく気?」
低くて少し笑いを含んだ声が、耳元に落ちる。
「…?」
状況が飲み込めなくて見上げると、尋くんは呆れたみたいに眉を寄せた。
「店長が休憩入れてくれた意味ねーだろ。ちょっとでいいから付き合ってよ」
「…えっ!?」
付き合うって、なにに?どこに?
頭の中がぐるぐるしているうちに、尋くんは私の返事なんて最初から必要ないみたいに、そのまま腕を引いたまま歩き出す。
わ、私、いつも引っ張られてる気がするっ…!
気づけば彼のペースに巻き込まれてる。
まって、と大きな背中に呼びかけても、全然止まってくれなくて。広い背中がすぐ前にあって。