きみは硝子のゼラニウム




尋くん、私、雛菊なんて名前、好きじゃないの。

だから、私の名前を知る人には、ひなって呼んでもらってるの。

好きじゃない、の。



それなのに、尋くんはきっと何気なくそう言っただけだと思うけれど。


それでも、私にとっては胸がいっぱいになる言葉で、息が詰まりそうになる。



泣きそうになるのをぐっとこらえて、ゆっくりと尋くんを見上げれば、彼は優しい笑顔でふっと目を細めて柔らかく、ひな、と呼ぶ。



その甘く響く声に、胸の奥のもやもやや戸惑いが、ふっと溶けていくような感覚。


名前ひとつで、こんなに心が揺れるなんて、思ってもみなかった。


小さく息をついて、でもまだ、頬が熱くて、何も言えずにそのまま見上げ続けてしまう自分がいた。














” コチョウラン ”

― 幸せが飛んでくる





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