【完】きみは硝子のゼラニウム




「あっ!尋みっけ!」



場違いなくらい大きな声が空気を裂いた。

次の瞬間、どんっと鈍い衝撃音。

尋くんの体が後ろから勢いよく何かにぶつかられて、バランスを崩すのがスローモーションみたいに見えた。



「へっ…」



間抜けな声が自分の口から漏れる。考える暇なんてなかった。

尋くんの体が、私のほうへ倒れてくる。


近づいてくる顔。揺れる前髪。驚いたように見開かれた瞳。時間が一瞬止まったみたい。


きらきらと光の粒みたいなものが視界の端で弾けて、次の瞬間、視界いっぱいに尋くんが広がる。

息が触れそうなくらいで、頭が真っ白になる。


たまらず、ぎゅっと目を閉じた。



「あっ…ぶねー」



すぐ近く、耳元みたいな距離で尋くんの声がして、パチッと目を開けた瞬間、今にも鼻が触れそうな距離で、視線がぶつかる。

黒目の中に、ちっちゃく映る私がいて。



「…っ、」


「…や、ば」



小さな声が重なって、次の瞬間、ほんとうに息が止まりかけた。



< 82 / 327 >

この作品をシェア

pagetop