君となら地獄を見たい
わたしは基本的にボスと行動を共にしていた。
"BLISTER"社内での通常業務を行いながら、大樹さんから会社近隣に"ゴブリン"の存在の連絡が入ると、外出をして"ゴブリン"の芽を摘み、社内に戻って来る。
わたしの"摘み方"は、基本的には毒針を使用する。
わたしは"ロスト·ダガー"に加入してから、ボスに薬学に関する資料を貰い、独学で試行錯誤しながら、様々な薬を調合してきた。
その中で最も使用率が高いのが、毒針だ。
機械系に強い大樹さんに相談しながら指輪型の毒針装置を開発し、わたしは常に人差し指にその指輪をはめて行動している。
親指の端で指輪の横にある小さなスイッチを押すと、ミリ単位の小さな毒針が出てくる仕組みとなっており、それを相手の皮膚に刺すと、一瞬にして毒殺出来るのだ。
毒針は皮膚に溶けるように細工しており、かなり微量な毒の為、毒殺だと気付かれる可能性はゼロに近い。
苦しむ事なく一瞬にして倒れ、死亡する為、死因は心臓発作として片付けられる事が多いのだ。
そして、"ブラック·ガルヴァス"との戦いに幕を開けてから二日で、ゴブリンの数は43名まで減らす事が出来た。
みんなそれぞれが日本中に散らばり、任務を遂行しているおかげだ。
しかし、敵の人数が減ってきたからといって安心は出来ない。
相手側は死亡者が増えれば増えるほど、焦るはずだ。
どのタイミングで山野首相を狙ってくるか分からない。
それから、わたしたち"ロスト·ダガー"が山野首相側についている事は当然把握しているだろう。
それは必然的にわたしたち自身の命も狙われやすくなる事を意味するのだ。
"BLISTER"の定時が過ぎ、本部のB7にある自室でわたしは毒針の補充を行なっていた。
すると、ドアをノックする音が聞こえ「誰?」と声を掛けると、「俺だ。」と言う聞き慣れた声が返ってきた。
わたしはドアの方へ歩み寄り、ドア横のセンサーに手をかざす。
各自室のドアは、部屋の持ち主の手をセンサーに認識させないと鍵が開かない仕組みになっているのだ。
「"俺だ"って、オレオレ詐欺?」
わたしはそう言って、呆れ顔でドアの向こうに立つ火鷹を見上げた。
「"俺だ"だけで開けてくれただろ。もう少し警戒心を持てよ。」
火鷹はそう言いながら、わたしの部屋へと入って来た。
わたしは自室のドアを閉めると「そうね。今度から開けないようにする。」と言った。