君となら地獄を見たい
ボスが行ってしまい、火鷹の部屋に二人きりになったわたしたち。
火鷹は大きな溜め息をつき、「何言ってんだ、あのエロ親父は······」と呆れていた。
「ふふっ、はははははっ!」
突然笑い出すわたしに、火鷹は「何笑ってんだよ。」と言う。
わたしは「あ、ごめん。ふふっ、ボスの言葉がおかしくて。」と笑って溢れた涙を指先で拭った。
「YDK、やればできる子って、ボス面白過ぎっ。」
「何だよ···、俺の事、馬鹿にしてんのか?」
「違うよ。でも、親子なのに、そういうとこ全然似てないよね。ボスと火鷹って、正反対。」
わたしはそう言うと、奥の壁際に置いてある火鷹のベッドまで歩き、腰を下ろした。
「親父が軽過ぎんだよ。」
「でも、軽いって言ったって、誰にでも手を出すチャラ男ではないじゃない?女性に対しては優しいし、紳士的なとこあるし、普通に会社でもモテてたけど、社員に手を出すような事はしたことないし。わたしは秘書として、毎日ボスの傍に居させてもらってたけど、素敵な男性だと思うよ。」
火鷹はこちらに歩み寄って来ると、ドスンと雑にわたしの隣に腰を下ろした。
そして、横目でわたしを見ると「親父の事、随分褒めるじゃん。」とボソッと呟いた。
「ボスの事は、尊敬してるからね。」
わたしがそう言うと、火鷹が突然テンションが下がり、肩を落として足元に視線を落とした。
「何だよ···、そんな事言われたら、普通に落ち込むんだけど。」
「えっ?」
「だって、親父と俺は正反対なんだろ?」
拗ねたような口振りでそう言う火鷹。
(えっ、まさか·····それって、ヤキモチ妬いてくれた?)
「正反対だけど、ボスはボスだし、火鷹には火鷹の良いとこがあるでしょ?」
「俺の良いとこってどこだよ。」
「えっ、それはぁ······」
わたしが火鷹の問いにすぐに答えられず、言葉に詰まっていると、火鷹はわたしを横目で見ながら「言えてねーじゃん。」と拗ねていた。
拗ねる火鷹に、焦るわたし。
火鷹の良いところが見つからないわけではない。
良いところも、可愛いところも、好きなところもある。
けど、なぜだろう······
ボスの事を話した時のように、スラスラと思うままに言葉が出てこないのだ。