君となら地獄を見たい
ボスは、火鷹とわたしの決意の声に穏やかな口調で「ありがとう。」と言った。
そして前屈みになり、膝に肘をつくと、ボスは火鷹とわたしを交互に見た。
「お前たちは···、必ず生き残れ。これも命令だ。そして、この最後の任務が完了したら···、この世界から身を引け。二人で力を合わせて、普通に···普通の幸せを見つけて、生きていきなさい。」
その言葉は、まるで"ボス"からではなく"父"からの命令のように聞こえた。
父親からの命令に、隣に座る火鷹の肩が微かに震えているのを感じた。
ボスはわたしの首元に手を伸ばし、そしてわたしが身に付けた母の形見であるネックレスに手を触れると、「宝珠も、それを願っているはずだよ。」と優しい表情で言った。
わたしは涙をグッと堪えると、声が震えないよう注意をはらい「はい。」とボスに微笑んで見せた。
ボスはわたしの返事に「うん。」と頷き、安心したかのように微笑む。
すると、ボスは「さて!この話はこれで終わりだ!」と言いながら、バンッと自分の膝を叩き、それからスッと立ち上がった。
「火鷹!なっちゃん!」
つい、たった今までの雰囲気とは一変し、いつものボスに戻る。
火鷹は拍子抜けしたように驚きながら「な、何だよ。」と言った。
「君たちは、これから二人で火鷹の部屋へ行きなさい!」
「はっ??」
「えっ、ボス、どういう事ですか??」
ボスが言いたい事も状況も理解出来ないまま、火鷹とわたしはボスに背中を押され、火鷹の部屋へと場所を移した。
そして火鷹の部屋の中へわたしたち二人が入ったのを見届けると、ボスは腰に手を置きながらわたしたちにこう言った。
「二人の時間は、今しかないぞ!明日になれば忙しくなる!」
「忙しくなるのは分かってるよ。」
「いいや!火鷹、お前は分かってない!」
強い口調でまるで子どもを説教するかのようなボスの口振りに、火鷹はポカンとしていた。
「火鷹、男はな、守るものが出来ると強くなれるんだ。今、お前が一番に守りたいのは、誰だ?」
ボスの問いに「えっ······」と戸惑いながらも、火鷹はわたしの方を向いた。
するとボスは「うん、分かったな!」と一人で納得をし、それから「漢を見せる時は、今しかない!あとは、二人の時間を大切に過ごしなさい!」と言って、その場から立ち去ろうとした。
「はっ?!親父、こんな時に何言ってんだよ!」
火鷹がボスにそう言うと、ボスは一度足を止め振り向くと「お前は、死浪烙成の息子だ!やればできる子!YDK!」と言い、再び歩き出そうとした。
が、一瞬だけ立ち止まると口元を隠すような仕草をし、ボスは小声で「今のうちだからこそ、イチャイチャしとけ!」と言い、悪戯に笑うと足早に立ち去って行ってしまった。