君となら地獄を見たい

「さて、ママはハンバーグ作っちゃうね!」

わたしがそう言いエプロンを着けると、寿砂は「着替えたら風呂洗うわ。」と言い、着替えに寝室へと向かって行った。

「珠菜もお手伝いするぅ!」
「本当?じゃあ、お肉コネコネしてもらおうかな?」
「いいよぉ!」

娘と並んでキッチンに立ち、料理をする時間。

この瞬間、時折一閃くんの事を思い出す事があった。

それから家族3人、食卓を囲んで夕飯を食べ、片付けている間に寿砂は珠菜をお風呂に入れてくれて、わたしが一人でお風呂に入っている時間に、寿砂は珠菜を寝かしつけてくれる。

珠菜が眠った後は、寿砂と二人の夫婦時間。

「お疲れ。」
「お疲れ様ぁ。」

そう言って、缶ビールで乾杯をして晩酌する日なんかもあったりする。

お互いに一日あった事を話し、テレビを見ながら他愛もない話をしたり、そんな時間さえも幸せだ。

そして就寝時間になると、わたしたちはダブルベッドで並んで眠る。

しかし、わたしは時折不安になる事があった。
それは···――――

「ねぇ、寿砂。」
「ん?」
「わたしたち、こんなに幸せでいいのかなぁ。」

わたしがそう言うと、寿砂はわたしを抱き寄せ「親父が言ってただろ。幸せになれって。」と言う。

「うん。だけど···、珠菜には言えないけど、わたしたちはたくさんの人の命を摘んできた···。それなのに、いいのかなって···時々不安になる。」
「まぁ···、そうだな。でも、俺は夏菜と珠菜さえ居てくれれば、何でもいい。」

寿砂はそう言うと、わたしの頬に手を触れた。

「もし、それを世間が許してくれなかったとしても、俺は構わない。俺は、夏菜と珠菜を守るだけだ。それから···この先、俺たちも親父たちがいる場所へいずれ行く事になる。それがもし、地獄だったとしても、俺は夏菜となら、地獄でもどこへでも行くよ。」

そう言って、寿砂は優しく微笑み、その言葉に心が落ち着いたわたしは、寿砂の腕の中に包まれた。

「わたしも···寿砂となら、地獄を見てみたい。」

そう話すわたしたちの枕元には、フレームに入れて飾られた一枚の写真と、何年経っても赤い輝きを保ち続けているネックレスがガラスケースに保管されていた。

写真は、あの時にみんなで撮った最初で最後の記念写真。

みんなは天国へ行けたのだろうか、それとも···――――

どちらにしても、またいつかどこかでみんなに会える事を楽しみに、わたしたちは"今"を生き続けていく···―――――




―END―


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