佐倉くん、好きじゃないのにその気にしないで
私は思わず駆け寄った。

男の人は、いててて……と唸りながら、猫を優しく放す。

猫が元気そうに歩いていくのを見たあと、私の方を見て、「ん、大丈夫。ありがと〜」と涼しい顔で軽く笑った。

この時……私は、なんだか……よく分からない感情になった。
胸が締め付けられて……なのになぜか嬉しくて……。

今思ったら……あの時から恋してしまっていたのかもしれない。
ただ、猫を助けただけ。

たった……それだけ。
けど、彼の優しい目と声色に……惹かれたのかもしれないな。
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