わがまま姫のりんごパイ
「おいしい」

 お城の大広間で、ひときわ大きな声が聞こえました。
 声を出したのはこの国のお姫様。街の人からは「わがまま姫」と呼ばれていました。

 わがまま姫は、おいしいものが大好き。
 このお城の前を通る旅人から、いつも変わった食べ物を教えてもらっては、それを取り寄せ、楽しんでいました。

 ところが、姫のわがままはだんだんエスカレート。
 とうとう、こんな法律まで作ってしまったのです。

「おいしいものを持ってこない者は、この道の通行禁止!」

 これには旅人たちも大困り。
 そんなある日のこと、一人の旅人がお城に持ち込んだのが「りんごパイ」でした。。

 「おいしいわ!」

 サクサクのパイを一口食べて、わがまま姫は大喜び。
 ホッと胸をなでおろした旅人は、帰り支度をしながら、ふとこんな言葉を漏らしました。

「ですが姫様。ほんとうは、これよりもずっとずっとおいしい、特別なリンゴパイがあるのですよ」
 
 わがまま姫は、身を乗り出して聞きました。

「まあ、それはどんなパイなの?」

 旅人はにっこり笑って答えました。

「それはね、『ひとり』では 決してつくれない、とっても大きなパイなのですよ」
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