気がつかないで
そのクラスだけは、雰囲気がやはり異様だった。
美男美女ばかりの生徒たちが一斉に俺を見た時、思わず怖気付いて一歩下がるところだった。
けれど、そんなことしたら不審に思われる。
俺は冷静さを保ち、なんとか教卓まで足を運んだ。
「それじゃあ昨日伝えた通り、この学年に特別教諭が入ることになりました。一条先生、一言お願いします」
ショートの女の先生が、俺に笑いかけていった。
俺は気づかれないように深呼吸をしてから言った。
「本日から特別教諭としてみなさんのサポートをします、一条とあです。よろしくお願いします」
他のクラスと違って、拍手が起こらない。
それが、どれほど長い時間だったかはわからない。
いや、実際にはほんの数秒だったのだろう。
それからひとりの女子生徒が声をあげた。
「ねー、先生ってベータじゃないよね?なんか変な感じする?」
ドクンッと心臓が跳ねた。
俺は実は特殊なオメガで、そのせいでアルファにオメガって気がつかれやすい。
そうなったら、どうなるかなんて想像できる。
返答できずに困っていた時、勢いよく後ろの扉が開いた。
「いやー、間に合ってよかった」
入ってきたのは、朱雀くんと霜降くん。
それと同時に、クラス全体にざわめきが起こる。
「うそ!?いつも教室にこないのになんで?」
「那月くんと凛くん眼福〜」
どうやらふたりは相当な人気者みたい。
それに、やっぱり教室に普段は来てないんだ。
でも、それならどうして今日は来たんだろう。
そんなふうに考えている間に、朱雀くんが霜降くんと連れて俺の目の前まで来た。
「とあ先生。ちゃんと、凛連れてきたよ。えらいっしょ?」
「えっ?あ、えっと、ちゃんと座ったらえらい…かな?」
突然のことでうまく言えなくて、しどろもどろな感じになっちゃった。
だけど朱雀くんは気にしていないみたいで、にこっと笑った。
「わかった。じゃ、今日からよろしくね」
霜降くんを無理やり席に座らせたあと、朱雀くんも席に座った。
その間も生徒たちの視線は痛かった。
その後一度職員室に戻ることになって、俺は廊下を神坂先生と歩いていた。
「ほんと、珍しいこともあるもんだね。ホームルームなんて、あのふたりが出席したのは何ヶ月ぶりだろな〜」
「えっ、そんな感じなんですか?」
神坂先生はさも当たり前のように言うから驚いてしまった。
「うん、そうだね。特に霜降は大変だから、一条先生はかわいそうだなってちょっと思ってたよ」
まあ、そうなんだろうな。
授業にもホームルームにもいないって聞いちゃったら、不良生徒のイメージしか浮かばないし。
そういえば、霜降くんはオメガ嫌いなんだよな。
先生は知ってるのかな?
聞いてみたかったけど、俺は言葉をグッと飲み込んだ。
「まーでも、頑張ってね。校長先生が『一条くんなら大丈夫』って言ってたし、それ信じてるから」
「…はい」
俺はもう少しだけ頑張ろうと思った。
***
「失礼しまーす。とあ先生に用があってきました〜」
職員室の前のドアにひょっこり現れた朱雀くんの姿に、先生たちがギョッとした。
なぜかって、俺を見つけてすぐにズカズカと入ってきたから。
俺もさすがに対応しないとなって思って、朱雀くんを止めた。
「待って待って。俺が外出るから、勝手に入ってこないで」
「はいはーい」
朱雀くんは軽い調子で回れ右をして、職員室を出ていった。
俺はため息をついてから、朱雀くんの後を追っていった。
神坂先生に頑張れ、という視線を向けられたので苦笑いをした。
美男美女ばかりの生徒たちが一斉に俺を見た時、思わず怖気付いて一歩下がるところだった。
けれど、そんなことしたら不審に思われる。
俺は冷静さを保ち、なんとか教卓まで足を運んだ。
「それじゃあ昨日伝えた通り、この学年に特別教諭が入ることになりました。一条先生、一言お願いします」
ショートの女の先生が、俺に笑いかけていった。
俺は気づかれないように深呼吸をしてから言った。
「本日から特別教諭としてみなさんのサポートをします、一条とあです。よろしくお願いします」
他のクラスと違って、拍手が起こらない。
それが、どれほど長い時間だったかはわからない。
いや、実際にはほんの数秒だったのだろう。
それからひとりの女子生徒が声をあげた。
「ねー、先生ってベータじゃないよね?なんか変な感じする?」
ドクンッと心臓が跳ねた。
俺は実は特殊なオメガで、そのせいでアルファにオメガって気がつかれやすい。
そうなったら、どうなるかなんて想像できる。
返答できずに困っていた時、勢いよく後ろの扉が開いた。
「いやー、間に合ってよかった」
入ってきたのは、朱雀くんと霜降くん。
それと同時に、クラス全体にざわめきが起こる。
「うそ!?いつも教室にこないのになんで?」
「那月くんと凛くん眼福〜」
どうやらふたりは相当な人気者みたい。
それに、やっぱり教室に普段は来てないんだ。
でも、それならどうして今日は来たんだろう。
そんなふうに考えている間に、朱雀くんが霜降くんと連れて俺の目の前まで来た。
「とあ先生。ちゃんと、凛連れてきたよ。えらいっしょ?」
「えっ?あ、えっと、ちゃんと座ったらえらい…かな?」
突然のことでうまく言えなくて、しどろもどろな感じになっちゃった。
だけど朱雀くんは気にしていないみたいで、にこっと笑った。
「わかった。じゃ、今日からよろしくね」
霜降くんを無理やり席に座らせたあと、朱雀くんも席に座った。
その間も生徒たちの視線は痛かった。
その後一度職員室に戻ることになって、俺は廊下を神坂先生と歩いていた。
「ほんと、珍しいこともあるもんだね。ホームルームなんて、あのふたりが出席したのは何ヶ月ぶりだろな〜」
「えっ、そんな感じなんですか?」
神坂先生はさも当たり前のように言うから驚いてしまった。
「うん、そうだね。特に霜降は大変だから、一条先生はかわいそうだなってちょっと思ってたよ」
まあ、そうなんだろうな。
授業にもホームルームにもいないって聞いちゃったら、不良生徒のイメージしか浮かばないし。
そういえば、霜降くんはオメガ嫌いなんだよな。
先生は知ってるのかな?
聞いてみたかったけど、俺は言葉をグッと飲み込んだ。
「まーでも、頑張ってね。校長先生が『一条くんなら大丈夫』って言ってたし、それ信じてるから」
「…はい」
俺はもう少しだけ頑張ろうと思った。
***
「失礼しまーす。とあ先生に用があってきました〜」
職員室の前のドアにひょっこり現れた朱雀くんの姿に、先生たちがギョッとした。
なぜかって、俺を見つけてすぐにズカズカと入ってきたから。
俺もさすがに対応しないとなって思って、朱雀くんを止めた。
「待って待って。俺が外出るから、勝手に入ってこないで」
「はいはーい」
朱雀くんは軽い調子で回れ右をして、職員室を出ていった。
俺はため息をついてから、朱雀くんの後を追っていった。
神坂先生に頑張れ、という視線を向けられたので苦笑いをした。


