呪われた聖女は運命を覆したい
「突然の告白で申し訳ないのですが、私はすでに神の遺物と契約を交わしているのです」
「それは本当なのですか?」
殿下とエンシミオの目つきが変わった。
それはそうなのでしょう。
帝国2位の実力を持つと見られている私が、この年齢で神の遺物と契約を交わしているということはただ事ではないのだから。
「ええ、本当ですわ。私の神の遺物はタロットカードです」
「タロットカード…」
エンシミオがそう繰り返した。
タロットカードは運命をねじ曲げ、全てを思い通りにできるという伝説を持っている。
だから、青き血上位者ではないと扱えないのだ。
「それは…アランが知っていたということですか?」
鋭いわね。
たしかに私との婚約をこんなに急いでくるということは、その可能性を考えるのは自然だ。
けれどおそらく——。
「いいえ、なにも関係ないと思いますわ。第一、この事実は親友にさえ話していないのですから」
私がそう言うと、殿下は驚いたように私を見た。
「よかったのですか。そのような事実を俺たちに言って」
「……ええ、いいのです。だって私たち、これから共闘者になるのでしょう?」
殿下とエンシミオが大きく目を見開いた。
その後、殿下は笑った。
「はははっ、共闘者か。それはいいな」
それから私を見つめた。
「貴女はタロットカードの力でアランの悪事を知ったということなんだな。理解した。それと、貴女は俺たちの目的をわかっているだろう。先ほど“共闘者”と言ったのはそういうことだろう?」
どう説明しようかと迷っていると、アミューズが後ろから言った。
『主様、ウェラ・メンスの力で彼らの過去を見たことを明かしましょう。それと、イマゴ・デイを使ってはくださいませんか?』
イマゴ・デイは化身の姿を見せるようにするためのカード。
つまり、アミューズはふたりになにかを話したいと思ってるの?
動揺して固まってしまうと、不審に思ったのか殿下が声をかけた。
「スペネット侯爵嬢?」
私はハッとした。
それから小さくため息をついた。
「はぁ…殿下、たしかにその通りです。私はカードを使い、殿下たちの過去の話を見たのです。仲間を探していることを知り、そして純粋に帝国民の幸せを願う優しいお方だと知りました。だから私は殿下と手を組みたいと思ったのです」
それから、私は聞いた。
「殿下、化身の姿を見たいと思ったことは?」
「はっ…?」
突然の訳のわからない質問に驚いたのだろう、殿下は腑抜けた声を出した。
私はなにを聞いているのだろう。
内心疑問を持ちながら言葉を続ける。
「化身の姿は殿下やエンシミオには見えないのですよね?今ここにいる化身の姿も」
私はアミューズに視線を移した。
殿下は首を傾げる。
「化身というのは非常に長い時を過ごし、私たち以上の知識と経験を持っているものです。彼は非常に優秀な仲間です。ですから、私が彼の姿を見えるようにして差し上げましょう」
「ま、待ってくれスペネット侯爵嬢。なにを言っているのだか——」
「“タロットカード、出現”」
殿下の声を遮り、そう唱えた。
アミューズは出現させたカードの一枚を私に渡した。
もうなにを使うのかわかっているのだ。
「“ イマゴ・デイ”」
カードが光り、使用され、その瞬間殿下とエンシミオの表情は驚きのものへと変わった。
その視線の先にはアミューズがいる。
まあ、当然の反応よね。
今までなにもなかった場所に、突然人が現れたのだから。
アミューズはふたりに礼をした。
「お初にお目にかかります。タロットカードの化身、アミューズにございます。以後お見知り置きを」
それから、ハッとした様子の殿下がゆっくりと口を動かして言った。
「君が…化身」
化身をアミューズしか見たことがないのでわからないが、化身というのはどうも不思議な空気をまとっている。
神の使いという伝承はあながち間違ってはいないのかもしれない。
その異様な気配に、ふたりは圧倒されたのだと思う。
「ええ、そうですわ。彼と出会って数日、されども数日。彼は私を支えてくれる重要な人物です。先ほども申し上げた通り、化身の力は神の遺物を所有していなくても大いに役立ちます。そんな彼を紹介したいと思った限りでございます」
そう言って私は笑って見せた。
すると、殿下は目を閉じて息をゆっくりと吐き出した。
その後私を真っ直ぐに見て言った。
「突然、化身の姿を見たいかと聞かれ驚いたが…。スペネット侯爵嬢がここまでしたんだ。それは、俺たちと共闘者になるという強い表れなのだろうと取っていいのか?」
「ええ、そういうことです」
「ならばぜひ頼みたい。スペネット侯爵嬢、俺たちの仲間になってくれるか?」
私はふっと笑みをこぼした。
今、私は復讐のスタートラインに立ったのかもしれない。
そう思うと、少し嬉しかった。
「ええ、もちろんですわ」
私の返答に、殿下も微笑んだ。
それからエンシミオに言う。
「エンシミオ、俺の書斎から紙となにか書くものを持ってきてくれ」
「承知いたしました」
エンシミオはそう返事をして、部屋を出ていった。
それから、次に殿下は私に言った。
「スペネット侯爵嬢、この後時間はありますか?情報交換をしておきたいのですが…」
私は部屋に設置された時計をチラッと見た。
まだ午前中、時間はたっぷりあるわね。
「ええ、大丈夫ですわ。本日は特に予定がありませんので。ですが、19時ごろには屋敷に帰っておきたいですわ。夕食の時間なので」
一応そのように言っておく。
それから、殿下は頷いた。
「ああ、わかった。感謝する。それとスペネット侯爵嬢、これからは共闘者になるのだ。お互い気楽に話さないか?」
私はその提案にクスッと笑った。
殿下はもとよりあまりかしこまっていないのに。
まあ、彼も皇太子教育を受けているのだろうから、もっとかしこまることはできるのだろうが。
「ええ、いいですわよ。では、ぜひ私のことはムクとお呼びください」
殿下は私の言葉に、一瞬目を見開いた。
それからまた頷いた。
「ああ、そうしよう。なら俺のことはセアと呼んでくれ」
「はい、セア様」
しかし私の回答には、セア様は少しだけ眉をひそめた。
「呼び捨てでよかったのだが」
これについてはさすがに驚いてしまった。
皇族のお方を呼び捨てにするなど、あまりに不敬である。
私はセア様の婚約者でもないのだから。
私は首を横に振った。
「いえ、変に周りに誤解を与えてしまうので。これでいいですわ」
「それは本当なのですか?」
殿下とエンシミオの目つきが変わった。
それはそうなのでしょう。
帝国2位の実力を持つと見られている私が、この年齢で神の遺物と契約を交わしているということはただ事ではないのだから。
「ええ、本当ですわ。私の神の遺物はタロットカードです」
「タロットカード…」
エンシミオがそう繰り返した。
タロットカードは運命をねじ曲げ、全てを思い通りにできるという伝説を持っている。
だから、青き血上位者ではないと扱えないのだ。
「それは…アランが知っていたということですか?」
鋭いわね。
たしかに私との婚約をこんなに急いでくるということは、その可能性を考えるのは自然だ。
けれどおそらく——。
「いいえ、なにも関係ないと思いますわ。第一、この事実は親友にさえ話していないのですから」
私がそう言うと、殿下は驚いたように私を見た。
「よかったのですか。そのような事実を俺たちに言って」
「……ええ、いいのです。だって私たち、これから共闘者になるのでしょう?」
殿下とエンシミオが大きく目を見開いた。
その後、殿下は笑った。
「はははっ、共闘者か。それはいいな」
それから私を見つめた。
「貴女はタロットカードの力でアランの悪事を知ったということなんだな。理解した。それと、貴女は俺たちの目的をわかっているだろう。先ほど“共闘者”と言ったのはそういうことだろう?」
どう説明しようかと迷っていると、アミューズが後ろから言った。
『主様、ウェラ・メンスの力で彼らの過去を見たことを明かしましょう。それと、イマゴ・デイを使ってはくださいませんか?』
イマゴ・デイは化身の姿を見せるようにするためのカード。
つまり、アミューズはふたりになにかを話したいと思ってるの?
動揺して固まってしまうと、不審に思ったのか殿下が声をかけた。
「スペネット侯爵嬢?」
私はハッとした。
それから小さくため息をついた。
「はぁ…殿下、たしかにその通りです。私はカードを使い、殿下たちの過去の話を見たのです。仲間を探していることを知り、そして純粋に帝国民の幸せを願う優しいお方だと知りました。だから私は殿下と手を組みたいと思ったのです」
それから、私は聞いた。
「殿下、化身の姿を見たいと思ったことは?」
「はっ…?」
突然の訳のわからない質問に驚いたのだろう、殿下は腑抜けた声を出した。
私はなにを聞いているのだろう。
内心疑問を持ちながら言葉を続ける。
「化身の姿は殿下やエンシミオには見えないのですよね?今ここにいる化身の姿も」
私はアミューズに視線を移した。
殿下は首を傾げる。
「化身というのは非常に長い時を過ごし、私たち以上の知識と経験を持っているものです。彼は非常に優秀な仲間です。ですから、私が彼の姿を見えるようにして差し上げましょう」
「ま、待ってくれスペネット侯爵嬢。なにを言っているのだか——」
「“タロットカード、出現”」
殿下の声を遮り、そう唱えた。
アミューズは出現させたカードの一枚を私に渡した。
もうなにを使うのかわかっているのだ。
「“ イマゴ・デイ”」
カードが光り、使用され、その瞬間殿下とエンシミオの表情は驚きのものへと変わった。
その視線の先にはアミューズがいる。
まあ、当然の反応よね。
今までなにもなかった場所に、突然人が現れたのだから。
アミューズはふたりに礼をした。
「お初にお目にかかります。タロットカードの化身、アミューズにございます。以後お見知り置きを」
それから、ハッとした様子の殿下がゆっくりと口を動かして言った。
「君が…化身」
化身をアミューズしか見たことがないのでわからないが、化身というのはどうも不思議な空気をまとっている。
神の使いという伝承はあながち間違ってはいないのかもしれない。
その異様な気配に、ふたりは圧倒されたのだと思う。
「ええ、そうですわ。彼と出会って数日、されども数日。彼は私を支えてくれる重要な人物です。先ほども申し上げた通り、化身の力は神の遺物を所有していなくても大いに役立ちます。そんな彼を紹介したいと思った限りでございます」
そう言って私は笑って見せた。
すると、殿下は目を閉じて息をゆっくりと吐き出した。
その後私を真っ直ぐに見て言った。
「突然、化身の姿を見たいかと聞かれ驚いたが…。スペネット侯爵嬢がここまでしたんだ。それは、俺たちと共闘者になるという強い表れなのだろうと取っていいのか?」
「ええ、そういうことです」
「ならばぜひ頼みたい。スペネット侯爵嬢、俺たちの仲間になってくれるか?」
私はふっと笑みをこぼした。
今、私は復讐のスタートラインに立ったのかもしれない。
そう思うと、少し嬉しかった。
「ええ、もちろんですわ」
私の返答に、殿下も微笑んだ。
それからエンシミオに言う。
「エンシミオ、俺の書斎から紙となにか書くものを持ってきてくれ」
「承知いたしました」
エンシミオはそう返事をして、部屋を出ていった。
それから、次に殿下は私に言った。
「スペネット侯爵嬢、この後時間はありますか?情報交換をしておきたいのですが…」
私は部屋に設置された時計をチラッと見た。
まだ午前中、時間はたっぷりあるわね。
「ええ、大丈夫ですわ。本日は特に予定がありませんので。ですが、19時ごろには屋敷に帰っておきたいですわ。夕食の時間なので」
一応そのように言っておく。
それから、殿下は頷いた。
「ああ、わかった。感謝する。それとスペネット侯爵嬢、これからは共闘者になるのだ。お互い気楽に話さないか?」
私はその提案にクスッと笑った。
殿下はもとよりあまりかしこまっていないのに。
まあ、彼も皇太子教育を受けているのだろうから、もっとかしこまることはできるのだろうが。
「ええ、いいですわよ。では、ぜひ私のことはムクとお呼びください」
殿下は私の言葉に、一瞬目を見開いた。
それからまた頷いた。
「ああ、そうしよう。なら俺のことはセアと呼んでくれ」
「はい、セア様」
しかし私の回答には、セア様は少しだけ眉をひそめた。
「呼び捨てでよかったのだが」
これについてはさすがに驚いてしまった。
皇族のお方を呼び捨てにするなど、あまりに不敬である。
私はセア様の婚約者でもないのだから。
私は首を横に振った。
「いえ、変に周りに誤解を与えてしまうので。これでいいですわ」


