呪われた聖女は運命を覆したい
イッツショータイム
「そろそろ次のステージに変わるわね。一度休憩しましょうか」
私はみんなにそう告げた。
セア様も頷いた。
奥に行くにつれて、みんなの魔力消費も激しく、ポーションの減りも激しくなっていく。
ポイントは十分に貯まった。
あとは昇給するためのポイントを稼いでいくだけ。
と、ここまでは順調だった。
しかし、順調すぎる気もするのだ。
なにより気掛かりなのはサニアのこと。
ここまで文句ひとつ言わずただただ聖女として役目を果たしているところが、どうもなにか企んでいると思えてしまうのだ。
余り疑いすぎるのもよくないのだろうが。
そうしてしばらく経ち、みんなの魔力も回復したところでまた進み出した。
そろそろダンジョンの外では夕暮れ時ってところかしら。
そうして、景色が入れ替わった。
「なんだ…ここは…」
ハイリ様が声を漏らした。
今までのステージとは明らかに違う、光も通さない閉鎖的な空間。
私はその景色を見てハッとした。
ここは“冥界ダンジョン”だ。
闇属性の魔物が住みつき、さらに上位種になると黒属性の魔物が出てくる危険エリア。
おそらく学園指定外エリアに来てしまったのだ。
ここは白魔法か光魔法を持つもの以外にとっては不利すぎるステージ。
さすがに引き返すのが賢明と言えるだろう。
「セア様、ここはおそらく冥界ダンジョンです。引き返しましょう」
「冥界ダンジョン…か。そうだな、学園指定外エリアとなると危険が跳ねあがる。引き返そう」
私は頷き、引き返す。
しかし、私を…私たちを止めた者がいた。
「“エリアシールド”」
私はその魔法に弾かれ、後ろへと交代する。
私は思わず振り返った。
シールドとは、聖女のみに許された魔法。
つまり、この魔法の使用者は——。
「サニア…!!どういうつもりなの!?」
「ふ、ふふ。あはははは…!!」
私の言葉に、今まで聞いたこともない声をあげて笑った。
なに、なんだというの…!?
「ムク、あなたは騙されたのよ!!目障りなゴミにはさっさと消えてもらうためにね…!」
「サニア、貴女…本当になにを考えてるの?」
「サニア様、お見事です」
私が怒鳴ったあと、後ろから女の声が聞こえた。
振り返れば、目の前にフードを被った小柄な人が立っていた。
顔も服装も全く見えない不気味な人物だった。
なぜ不気味に感じたのか。
おそらく、私と同じ黒魔法の気配がするから。
「貴女は…誰なの?」
そう聞くと、彼女は指を弾いて言った。
「イッツショータイム!!ここからは我々のターンです。貴女たちを本当の冥界へご招待しましょう!」
本当の冥界…?
いったいこの人はこの状況でなにを言っているの?
だけど、今はそんなことを考えても仕方がない。
「セア様!早く引き返す方法を見つけましょう…!」
「だか、これはどうするんだ!!」
そう言われて、私はハッとした。
サニアにエリアシールドを使われていて、逃げ出すのが困難だということに。
私は下唇を噛み締める。
どうすればいいの…このままじゃまたサニアの罠にハマってしまう…!!
そう少し諦めかけていたとき、アミューズが声をあげた。
『主様、落ち着いてください。今の主様は過去とは違います。タロットカードの力を使うのです』
「アミューズ……」
私は深呼吸をした。
そうよ、今の私には神の遺物があるじゃない。
今は私が神の遺物を使えると知られてしまうなんて危険性を考えてる場合じゃない!!
私はタロットカードを使った。
「私に力を貸して…!カード使用、“ デーストルークティオー”!!」
カードが光を放って弾け、同時にシールドを破壊した。
このカードは対象のものを一瞬で破壊する能力を持つ。
物であること、半径5メートル以内にあること、というのが条件だけれど。
「“黒よ、全てを支配すべく生まれたものよ。怨念の意をここに。我を光から守れ、我は永遠に滅びぬ。 スクートゥム”!」
セア様が黒魔法を使用し、サニアと女を除いて全ての人に薄い黒煙をまとわせた。
これはサニアが発動させたシールドよりは小さいけど、それと同等の効果を持つ黒魔法の盾だ。
「今のうちに逃げよう!」
「ムク様、早くこちらへ!」
ハイリ様とラリアが誘導をしてくれる。
私も急いでふたりのもとへと走っていく。
しかし。
「いけませんね〜。どうして逃げるのでしょうか?」
いつのまにか近距離に現れたフード女が私を逃すまいと立ちはだかった。
先ほどよりも近い距離感で、ふと女から百合の匂いがした。
この匂い…なんだか懐かしい。
思わず立ち止まってしまい、その隙に魔法を発動されてしまった。
もう、気がついた時には遅かった。
黒魔法の無詠唱魔法…!?
今まで見たことがないほどに幻想的な魔法陣が私の足元に浮かんだ。
「さようなら、呪われた聖女さん」
無詠唱で発動された魔法は、どんな魔法を使ったのか予想することは不可能だ。
だから魔法で対抗するしかっ…!
そう思った瞬間、魔法陣が描かれた場所に穴が開き、下へと落ちていった。
「ムクっ…!!」
セア様もいつのまにか魔法を発動されており、同じように下へと落ちていった。
それはみなも同様だった。
***
「きゃっ…!」
ドスンッと鈍い音を立てて地面に落とされた私。
不思議と痛みは感じなかった。
今落ちてきたであろう場所は、まるで最初から穴など空いていなかったかのようにきれいに塞がれていた。
私は唖然としていた。
黒魔法使いにとって、最初の詠唱は必ず必要になる。
それを省くと、体が黒魔法に侵食されて、最悪の場合命を落とすこともあるのだ。
なぜ無詠唱で発動できたのかはわからない。
だったら、今やるべきはそうではないわよね。
『主様、どうやらここは18層のようです』
「3つ下まで落とされてしまったのね…これはまずいわ。ここは生徒が入っていい階層ではないもの。今まで狩ってきた魔物の2倍のポイントの魔物がたくさんいるのよ。ひとりでは対処しきれないわ」
アミューズも深刻そうに表情を歪めた。
いくら黒魔法使いといえど、まだ使いこなしていないのに。
それにここにいては食料と水が底を尽きてしまう。
水魔法を使える者がいればまた別なのだが、近くにいるわけもなく。
さらにここは土で覆われていて、とても水属性ダンジョンとは思えず、水がなくなるのは時間の問題だろう。
私はみんなにそう告げた。
セア様も頷いた。
奥に行くにつれて、みんなの魔力消費も激しく、ポーションの減りも激しくなっていく。
ポイントは十分に貯まった。
あとは昇給するためのポイントを稼いでいくだけ。
と、ここまでは順調だった。
しかし、順調すぎる気もするのだ。
なにより気掛かりなのはサニアのこと。
ここまで文句ひとつ言わずただただ聖女として役目を果たしているところが、どうもなにか企んでいると思えてしまうのだ。
余り疑いすぎるのもよくないのだろうが。
そうしてしばらく経ち、みんなの魔力も回復したところでまた進み出した。
そろそろダンジョンの外では夕暮れ時ってところかしら。
そうして、景色が入れ替わった。
「なんだ…ここは…」
ハイリ様が声を漏らした。
今までのステージとは明らかに違う、光も通さない閉鎖的な空間。
私はその景色を見てハッとした。
ここは“冥界ダンジョン”だ。
闇属性の魔物が住みつき、さらに上位種になると黒属性の魔物が出てくる危険エリア。
おそらく学園指定外エリアに来てしまったのだ。
ここは白魔法か光魔法を持つもの以外にとっては不利すぎるステージ。
さすがに引き返すのが賢明と言えるだろう。
「セア様、ここはおそらく冥界ダンジョンです。引き返しましょう」
「冥界ダンジョン…か。そうだな、学園指定外エリアとなると危険が跳ねあがる。引き返そう」
私は頷き、引き返す。
しかし、私を…私たちを止めた者がいた。
「“エリアシールド”」
私はその魔法に弾かれ、後ろへと交代する。
私は思わず振り返った。
シールドとは、聖女のみに許された魔法。
つまり、この魔法の使用者は——。
「サニア…!!どういうつもりなの!?」
「ふ、ふふ。あはははは…!!」
私の言葉に、今まで聞いたこともない声をあげて笑った。
なに、なんだというの…!?
「ムク、あなたは騙されたのよ!!目障りなゴミにはさっさと消えてもらうためにね…!」
「サニア、貴女…本当になにを考えてるの?」
「サニア様、お見事です」
私が怒鳴ったあと、後ろから女の声が聞こえた。
振り返れば、目の前にフードを被った小柄な人が立っていた。
顔も服装も全く見えない不気味な人物だった。
なぜ不気味に感じたのか。
おそらく、私と同じ黒魔法の気配がするから。
「貴女は…誰なの?」
そう聞くと、彼女は指を弾いて言った。
「イッツショータイム!!ここからは我々のターンです。貴女たちを本当の冥界へご招待しましょう!」
本当の冥界…?
いったいこの人はこの状況でなにを言っているの?
だけど、今はそんなことを考えても仕方がない。
「セア様!早く引き返す方法を見つけましょう…!」
「だか、これはどうするんだ!!」
そう言われて、私はハッとした。
サニアにエリアシールドを使われていて、逃げ出すのが困難だということに。
私は下唇を噛み締める。
どうすればいいの…このままじゃまたサニアの罠にハマってしまう…!!
そう少し諦めかけていたとき、アミューズが声をあげた。
『主様、落ち着いてください。今の主様は過去とは違います。タロットカードの力を使うのです』
「アミューズ……」
私は深呼吸をした。
そうよ、今の私には神の遺物があるじゃない。
今は私が神の遺物を使えると知られてしまうなんて危険性を考えてる場合じゃない!!
私はタロットカードを使った。
「私に力を貸して…!カード使用、“ デーストルークティオー”!!」
カードが光を放って弾け、同時にシールドを破壊した。
このカードは対象のものを一瞬で破壊する能力を持つ。
物であること、半径5メートル以内にあること、というのが条件だけれど。
「“黒よ、全てを支配すべく生まれたものよ。怨念の意をここに。我を光から守れ、我は永遠に滅びぬ。 スクートゥム”!」
セア様が黒魔法を使用し、サニアと女を除いて全ての人に薄い黒煙をまとわせた。
これはサニアが発動させたシールドよりは小さいけど、それと同等の効果を持つ黒魔法の盾だ。
「今のうちに逃げよう!」
「ムク様、早くこちらへ!」
ハイリ様とラリアが誘導をしてくれる。
私も急いでふたりのもとへと走っていく。
しかし。
「いけませんね〜。どうして逃げるのでしょうか?」
いつのまにか近距離に現れたフード女が私を逃すまいと立ちはだかった。
先ほどよりも近い距離感で、ふと女から百合の匂いがした。
この匂い…なんだか懐かしい。
思わず立ち止まってしまい、その隙に魔法を発動されてしまった。
もう、気がついた時には遅かった。
黒魔法の無詠唱魔法…!?
今まで見たことがないほどに幻想的な魔法陣が私の足元に浮かんだ。
「さようなら、呪われた聖女さん」
無詠唱で発動された魔法は、どんな魔法を使ったのか予想することは不可能だ。
だから魔法で対抗するしかっ…!
そう思った瞬間、魔法陣が描かれた場所に穴が開き、下へと落ちていった。
「ムクっ…!!」
セア様もいつのまにか魔法を発動されており、同じように下へと落ちていった。
それはみなも同様だった。
***
「きゃっ…!」
ドスンッと鈍い音を立てて地面に落とされた私。
不思議と痛みは感じなかった。
今落ちてきたであろう場所は、まるで最初から穴など空いていなかったかのようにきれいに塞がれていた。
私は唖然としていた。
黒魔法使いにとって、最初の詠唱は必ず必要になる。
それを省くと、体が黒魔法に侵食されて、最悪の場合命を落とすこともあるのだ。
なぜ無詠唱で発動できたのかはわからない。
だったら、今やるべきはそうではないわよね。
『主様、どうやらここは18層のようです』
「3つ下まで落とされてしまったのね…これはまずいわ。ここは生徒が入っていい階層ではないもの。今まで狩ってきた魔物の2倍のポイントの魔物がたくさんいるのよ。ひとりでは対処しきれないわ」
アミューズも深刻そうに表情を歪めた。
いくら黒魔法使いといえど、まだ使いこなしていないのに。
それにここにいては食料と水が底を尽きてしまう。
水魔法を使える者がいればまた別なのだが、近くにいるわけもなく。
さらにここは土で覆われていて、とても水属性ダンジョンとは思えず、水がなくなるのは時間の問題だろう。


