呪われた聖女は運命を覆したい

強く願った理由

『主様?』
アミューズの声にハッとした。
『顔色が悪いですよ?無理はよくありません。少しお休みになられては?』
私はチラッとベッドを見る。
けれど、とてもじゃないが“休む”という言葉には頷けそうになかった。
それほどまでに目が()えてしまったせいだろう。
「いいの」
私はそう首を振ると、アミューズは私の手をとった。
その手はまるで大切なものを扱うかのように、優しい手だった。
『では主様。私に聞かせてはくれませんか?なにがあったのか。貴女様に、過去に戻りたいという強い願いが生まれた理由を』
そう聞かれて、私は途端に恐ろしくなった。
あの恐ろしい日々を誰かに言うのは怖かった。
そんな私を気遣ってか、アミューズは背中をさすってくれた。
『無理にとは言いません。しかし、私は主様を知りたい。そう思ってしまうのです』
アミューズは、ただ純粋に私を知ろうとしてくれている。
その純粋さが嬉しかった。
彼になら話してもいいかもしれないと、私にそう思わせてくれた。
そして、私はゆっくりと語った。
「私はこの国に生まれた聖女なの。一万年に一度だけ生まれるという聖女で、白魔法を使うことができるの。でも、私は禁忌の魔法とまで言われた黒魔法も使えるの」
『しかし…主様の手首や首周りには、呪いの紋様はないように感じられますが…』
そう。
黒魔法使いとは、生まれながらにして膨大な魔力を持っていて国ひとつを一瞬で滅ぼせるほどの力を持っている。
過去に黒魔法を持っている者が、国を滅ぼしかけた事件が起きたのだ。
誰もその者を黒魔法使いと知らなかったのは、手首と首周りの紋様が隠されていたから。
これは黒魔法使いの特徴とも言える。
その紋様は「呪いの紋様」と呼ばれ、誰もに恐れられる。
けれど、黒魔法使いの中でも魔力が特に多い者は紋様を隠すことができる。
これが黒魔法使いの見つからなかった理由。
私は聖女だから魔力量が桁違いに多く、呪いの紋様も隠すことができている。
「隠しているだけよ。周りになにか言われるのが怖いの。といっても、既に国中に知られてしまっているけれどね」
『隠しているのに、知られているのですか?』
私はコクッと頷いた。
「私は7歳で聖女の力に目覚めて、神殿で暮らし始めたの。魔法判定が行われるのは10歳の時でしょう?聖女の魔法は誰でも気になる者だから、魔法判定が公開されたのよ」
『なるほど。そこで判定を受けたのは白魔法と黒魔法で、その場にいた者が噂として流してしまったと。けれど、それならどうして主様は神殿で暮らしているのでしょうか』
黒魔法に目覚めた者は冷遇されやすいため、「闇堕ち」しやすい。
闇堕ちというのは、黒魔法使いがストレスを抱え続け呪いの紋様が繋がってしまう状態を指す。
呪いの紋様は鎖のような柄で、手首や首を一周すると所持者の魔力が全て解放されてしまう。
つまり、魔力暴走を引き起こす。
魔力暴走を起こせば、止められるのは弱点である白魔法使いだけ。
けれど、白魔法を使えるのは聖女のみ。
だから実質誰にも止めることができないのだ。
そして、国は黒魔法使いを幽閉することにした。
そこではできるだけ幸せに暮らさせるというのが国の義務となった。
黒魔法使いにストレスを与えて闇堕ちすることを防ぐためだ。
全て国を守るため。
そして、黒魔法に目覚めた私は本来幽閉されるはずだった。
しかし私は一万年にひとりしか生まれない聖女。
聖女である私の存在を逃すのは、神殿側としていい話ではなかった。
「神殿側が拒否したのよ。幸いにも、私の白魔法の力が黒魔法をけしかけていて危険性はなかったの。それに、神殿には聖女がいるから。魔力暴走を引き起こすことはないだろうって」
『聖女は主様ひとりでは?』
私は首をふった。
現代に聖女は3人存在する。
私と親友ふたり。
前代未聞のこの状況だけど、おそらく三万年聖女が生まれなかったせいでなにかが狂ってしまっているんだろうって。
「なにかが狂い出してるのよ。それか、大きな厄災が起こるって」
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