両思いでしたがタイムトリップして、敵国の王子と王女になりました!?
お願い、通して!
「見えた……、スター国だ!」

 馬車に揺られること、数時間。
 どうやら最短ルートを通ったらしく、予想していたよりもかなり短い時間で到着した。

 といっても、今日ばかりは、もう少し遅く着いてくれても良かった。
 だって……

「ど、どうしよう!
 まだ心の準備が出来てない!」
「気合で乗り越えろ」
「そんな~、ロロー!」

 門前払いをされた場合、どういう作戦でいこうか?の答えが出ないまま到着してしまう。
 え、ノープランだけど?
 突き進んでオッケーなの!?

「では、王女様」
「は、はい……」

 側近に手をひかれ、馬車を降りようとする。
 だけど――
 私は、すぐ馬車の中に戻された。

 バタンッ

「わあ!? 痛い!
 な、なに!?」

 驚いて、窓から外を見る。
 すると、私の目に写ったのは――

「スター国の門は、開いてる。
 だけど、中にいるのは……
 たくさんの兵士たち?」

 スター国の兵という兵がズラリと並び、私達に剣を向けていた。

「門前払いなら、まだ可愛い方だったんだね……」
「言ってる場合か」

 ロロも髪の毛の間から、背筋も凍るような、この光景を見ていた。

「レンは……いないか。
 さすがに、城から出してもらえないみたいだな」
「ど、どうして?」

「もしハート国が攻撃してきたら……、って心配してんじゃね?」
「そんな!
 むしろ、危ないのはコッチだよ~!」

 ここはスター国内だから、敵の兵力は充分だ。
 だけど、私達ハート国は……その半分もいない。

「いくら王様と王女が出かけるって言っても、大隊を何個も率いての移動は無理だもんな。
 しかも、装備も手薄。
 もしかして、俺らって……
 ここで一網打尽にされんのか?」
「一網打尽?」

「皆やられるって事だよ」
「えぇ!?」

 それはダメ!
 ダメーーと思っているのに、ハート国の人は「騙したな!」「おのれスター国!」と武器を構えて、少しずつ前進していた。

「え、みんな!
 ってか、お父様は!?」

 見るとお父様は、一番偉い兵士に、何やら指示を出していた。
 そして伝え終わったら、回れ右をして元来た道を猛烈ダッシュで戻っていく。
 馬の蹄の高らかな音……。
 じゃなくて!

「え、お父様!?」
「そりゃ、大将の首がとられちゃ終りだもんな。逃げるが勝ちだ」

「でも、兵士たちを置いていってるよ!
 皆も乗せなきゃ!」
「なに言ってんだよ。
 時間稼ぎをしないといけねーだろ」

「え――?」

 瞬間、頭が真っ白になった。

「時間稼ぎ?」
「残した兵士たちをオトリにして、王が出来るだけ遠くに逃げるんだ。
 皆で仲良く逃げてたんじゃ、すぐに追いつかれるからな。
 王が負けたら、ハート国は終わる。
 王も兵士も、それを回避したいんだ」

「で、でも」
「とか言ってたら、ほら。
 お前の番だぞ、ミア。
 お前も、王に続いて逃げるんだ」
「!?」

 見ると、確かに。
 窓から見える景色が、変わっている。
 元来た道を、戻っていた。

「や、やめて!
 私は帰らない!」

 せっかくここまで来たのに!
 皆がまだ残ってるのに!
 私だけ帰る事は、出来ない!

 だけど、窓から移る兵士の顔。
 その顔には、なんと笑顔があった。

「王女様、ここは俺たちに任せてください!」
「今まで頑張って来た王女の頑張り、こんなところで終わらせちゃダメですよ」
「またいつかお会いしましょう、王女様!」

「~っ!」

 ここに残される事が、どういう事か。
 皆、わかってるだろうに。

 バンッ

 私は、馬車の窓を思い切り叩く。
 だけど頑丈な創りで出来ているのか、ヒビさえ入らなかった。

「ねぇロロ、嫌だよ。
 私、嫌だよ!
 なんでこんな思いをしなきゃいけないの!?
 私、まだ十歳だよ!?
 こんな光景、見たくないよ!」
「ここじゃ二十歳だ、諦めろ」
「いや!」

 駄々っ子のような私に、ロロは諦めたようにため息をついた。

「じゃあ、何か案を出せ」
「案……?」

「出さなきゃ、みんな死ぬ。
 アイツら兵士は、全滅だ」
「……イヤ!!」

 私は、馬車の取っ手に手を掛ける。
 そして耳元で「やめろ!」と叫ぶロロをスルーして、

 ガチャ

 馬車の扉を、開けたのだ。
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