月が青く染まる夜に
ちくわは、ふたりの間に堂々と座っていた。
尻尾をゆっくり左右に揺らしながら、まるで任務完了と言わんばかりの顔。
私は小さく息を吐く。
迅和くんも、同じタイミングで呼吸を整えているのが分かった。
お互いに乱れた髪や服が面白おかしいけれど、さっきまでの空気が、まだ薄く漂っている。
指先に残る体温。少し早い鼓動。触れられた場所の、じんわりとした熱。
その全部を抱えたまま、私たちは前を向く。
テレビは消えたまま。
部屋は静かで、冷蔵庫の小さな音だけが聞こえる。
ちくわが、私の膝に前足をかける。
そして、当然のように体を横たえた。
完全封鎖。
それを見てしまった迅和くんは、絶望的な顔をしていた。
迅和くんの手が、ちくわの向こう側でそっと私の指先に触れる。
直接じゃない。毛並みを隔てて、かすかに。
ちくわの体温を通して伝わる、遠回りな温度。
それだけで、十分だった。
シャーの代わりに、低い警戒音がひとつ。
「…ラスボスだな」
という小さくつぶやく声に、私は笑いをこらえた。
ちくわ越しに、視線が合う。
さっきみたいな熱を帯びた目じゃない。でも、確かにやわらかい。
間にいるのは猫一匹。
それなのに、その距離が妙に安心する。
急がなくてもいい、と思える距離。
ちくわが目を細める。
警報は、もう鳴らない。
今夜はここまで。
ソファの真ん中には、最後までセキュリティーゲートが鎮座していた。
さっきの出来事が嘘みたいに、静かな時間が流れていった。
尻尾をゆっくり左右に揺らしながら、まるで任務完了と言わんばかりの顔。
私は小さく息を吐く。
迅和くんも、同じタイミングで呼吸を整えているのが分かった。
お互いに乱れた髪や服が面白おかしいけれど、さっきまでの空気が、まだ薄く漂っている。
指先に残る体温。少し早い鼓動。触れられた場所の、じんわりとした熱。
その全部を抱えたまま、私たちは前を向く。
テレビは消えたまま。
部屋は静かで、冷蔵庫の小さな音だけが聞こえる。
ちくわが、私の膝に前足をかける。
そして、当然のように体を横たえた。
完全封鎖。
それを見てしまった迅和くんは、絶望的な顔をしていた。
迅和くんの手が、ちくわの向こう側でそっと私の指先に触れる。
直接じゃない。毛並みを隔てて、かすかに。
ちくわの体温を通して伝わる、遠回りな温度。
それだけで、十分だった。
シャーの代わりに、低い警戒音がひとつ。
「…ラスボスだな」
という小さくつぶやく声に、私は笑いをこらえた。
ちくわ越しに、視線が合う。
さっきみたいな熱を帯びた目じゃない。でも、確かにやわらかい。
間にいるのは猫一匹。
それなのに、その距離が妙に安心する。
急がなくてもいい、と思える距離。
ちくわが目を細める。
警報は、もう鳴らない。
今夜はここまで。
ソファの真ん中には、最後までセキュリティーゲートが鎮座していた。
さっきの出来事が嘘みたいに、静かな時間が流れていった。