月が青く染まる夜に
後ろに設置してあるホワイトボードに、道路交通設備課の人間で現場にまだいるメンバーを笹原さんと二人で確認する。

「若林四ツ角交差点か…、ここにまだ迅和がいればワンチャンすぐに行けるかな?」

笹原さんが見つけた、迅和くんの名前。


事務所の空気が、私たちの会話を聞いて張り詰めた。
近くにいた同僚も、こちらに集まってくる。


私はすぐに再び受話器を取った。
道路交通設備課の、彼の専用番号。

コール音が鳴る数秒が、妙に長い。

『はい、佐藤です』

低く、落ち着いた声。
その一言だけで、心拍がほんの少しだけ整う。


「総務部の佐藤です。緊急です。迅和くん、青葉橋交差点にすぐ行けますか?歩行者信号固着、車両側は赤固定。大至急でお願いしたいです」

できるだけ短く、正確に。
でも声の奥で、別の感情がざわめいていた。

口には出せないその気持ちが、胸の内側で何度も反響する。

『了解。向かいます』

通話が切れた瞬間、私は受話器を置いたまましばらく手を離せなかった。


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