月が青く染まる夜に
私は桜華テックへ電話をかける。
担当は片桐さんなので、片桐さんの社用携帯にかけてみて出なければ会社へ電話するつもりだった。
呼出音はワンコールで途切れ、馴染みのある声が聞こえた。
『桜華テック、片桐です』
「お世話になっております、旭陽電力の佐藤です」
『あぁ、どうもー』
電話越しの彩さんの声は、会議室で聞くより落ち着いていて、でも相変わらず柔らかい。
ひとまず手短に事情を説明すると、短い沈黙。
『…なるほど。話は分かりました。つかぬ事をお聞きますが、迅和ってそこにいます?』
まるでこちらの事務所をどこかで見ているような言葉に、思わず顔を上げる。
迅和くんは私の視線には気づかず、デスクにもたれて隣で資料を見ていた。
「います」
『代わってもらえますか?』
私は「迅和くん」と呼びかけ、受話器を差し出す。
資料を見ていた視線が受話器に移り、受け取るとすぐに耳にあてた。
「もしもし、代わったよ」
…あぁ、まただ。
よくないと思うけど、胸がチクリと痛む。
自然で迷いがない、私の知らない迅和くん。
敬語がない声は、違和感とかじゃなくて、本当の彼なのではないかと感じてしまう。
担当は片桐さんなので、片桐さんの社用携帯にかけてみて出なければ会社へ電話するつもりだった。
呼出音はワンコールで途切れ、馴染みのある声が聞こえた。
『桜華テック、片桐です』
「お世話になっております、旭陽電力の佐藤です」
『あぁ、どうもー』
電話越しの彩さんの声は、会議室で聞くより落ち着いていて、でも相変わらず柔らかい。
ひとまず手短に事情を説明すると、短い沈黙。
『…なるほど。話は分かりました。つかぬ事をお聞きますが、迅和ってそこにいます?』
まるでこちらの事務所をどこかで見ているような言葉に、思わず顔を上げる。
迅和くんは私の視線には気づかず、デスクにもたれて隣で資料を見ていた。
「います」
『代わってもらえますか?』
私は「迅和くん」と呼びかけ、受話器を差し出す。
資料を見ていた視線が受話器に移り、受け取るとすぐに耳にあてた。
「もしもし、代わったよ」
…あぁ、まただ。
よくないと思うけど、胸がチクリと痛む。
自然で迷いがない、私の知らない迅和くん。
敬語がない声は、違和感とかじゃなくて、本当の彼なのではないかと感じてしまう。