扉の向こうの王子様~終電帰りの限界社畜OL、玄関のドアを開けたら異世界と繋がっていました

「エイゼルの休暇、次はいつくらい?」

 凛子の問いに、エイゼルは首を捻る。

「まだ判んないなあ。今度は新年に向けての色々な決め事しないといけないみたいだし。判ったら連絡するよ」

「りょーかい」

「どした?」

「ううん、なんでもない」

 エイゼルが、三杯目のグラスを注文し終えた凛子を咎める事は無い。

「そんな不安そうな顔されるとお兄さん心配なんですけど」

「だってさ! 官吏はともかく軍なんだもん」

 そう、確かに凛子は不安を感じていたのだ。見知らぬ世界においても、見知らぬ分野に明日から身を投じなければいけない。軍服を纏い、寂しい室内から軍本部に出勤し、あの寂しい部屋に帰る。軽口や愚痴を言い合う相手も居ない部屋に。

 目の前にいる男は、この世界に迷い込んで、一番最初に助けてくれた人物。色々あって、半年も苦楽?を共にした。凛子にとっては最早エイゼルがそう感じているように、兄も同然である。

 だが、エイゼルは知っていた。凛子が今の様に不安そうな顔を見せても、それはほんの一部分に過ぎない事を。なので、多少突き放した感はあるが「大丈夫大丈夫。頑張れる」と半ば言い聞かせるように小さな頭を乱暴に撫でつけた。

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