扉の向こうの王子様~終電帰りの限界社畜OL、玄関のドアを開けたら異世界と繋がっていました
◇◇◇
軍官舎に戻った頃には、既に辺りは深夜の色。
王宮西側には住宅地は殆ど無い。設備の問題で王宮内の施設に組み込まれなかった付属機関の建物が多い為、夕方以降はあまり人通りというものが無い。時間的には深夜まで、まだだいぶあるのだが、明りの消えた建物の影ばかりで、生活の気配は無く、どこまでも静かである。
一階の食堂からは談笑する声が漏れ聞こえてきていたが、ほろ酔い顔を覗かせる勇気が起きなく、丸めた敷物を抱えて細い階段を二階へとあがる。
念のため帰った事をカトレアに知らせようと隣室の戸を叩く。しかし反応が無い。もしかして就寝してしまったのかもしれない、と自室の戸を開けた瞬間後ろから声がかかった。
「帰ったのか」
「はい! 今さっき帰りました!」
「先に入浴を済ませていた」
化粧を落とし洗い髪のままのカトレアは、昼間に顔を見た時より幼く見える。表情は乏しいが、元々そういう性質なのだろう。
「凄い荷物じゃないか。一階に誰か暇そうな者が居ただろうに」
いうほど大荷物では無いのだが、淑女諸君は自ら敷物など運ばないのかもしれない。
「なんか憚られて……なんとなく」
カトレアはどこか動物じみた仕草で鼻を寄せる。
「確かに、酒の匂いもするしな」
「そ、そんなに飲んでないんですけど! 匂います……?」
「うん、かなり。明日の夜は歓迎会をする予定だから、開けておいてくれ」
「歓迎会、ですか」
「久しぶりの女性入室者だし、男どもが浮き足だっている。まあ、既にイイヒトが居るなら、あいつ等には出番が無い」
カトレアの笑い方は嫌味では無い。
「え、エイゼルはイイヒトじゃないですよっ! 兄代わりみたいな人です。保護者みたいな」
凛子の言葉を正しく理解したという理由からか、若しくは照れ隠しだとでも思われたのか、カトレアに宥められるように肩を叩かれ、複雑な気分になる。
「夜遅い時間だと婦人達が浴室を使用する事が多いから、行くなら今だな。それでは」
軍官舎に戻った頃には、既に辺りは深夜の色。
王宮西側には住宅地は殆ど無い。設備の問題で王宮内の施設に組み込まれなかった付属機関の建物が多い為、夕方以降はあまり人通りというものが無い。時間的には深夜まで、まだだいぶあるのだが、明りの消えた建物の影ばかりで、生活の気配は無く、どこまでも静かである。
一階の食堂からは談笑する声が漏れ聞こえてきていたが、ほろ酔い顔を覗かせる勇気が起きなく、丸めた敷物を抱えて細い階段を二階へとあがる。
念のため帰った事をカトレアに知らせようと隣室の戸を叩く。しかし反応が無い。もしかして就寝してしまったのかもしれない、と自室の戸を開けた瞬間後ろから声がかかった。
「帰ったのか」
「はい! 今さっき帰りました!」
「先に入浴を済ませていた」
化粧を落とし洗い髪のままのカトレアは、昼間に顔を見た時より幼く見える。表情は乏しいが、元々そういう性質なのだろう。
「凄い荷物じゃないか。一階に誰か暇そうな者が居ただろうに」
いうほど大荷物では無いのだが、淑女諸君は自ら敷物など運ばないのかもしれない。
「なんか憚られて……なんとなく」
カトレアはどこか動物じみた仕草で鼻を寄せる。
「確かに、酒の匂いもするしな」
「そ、そんなに飲んでないんですけど! 匂います……?」
「うん、かなり。明日の夜は歓迎会をする予定だから、開けておいてくれ」
「歓迎会、ですか」
「久しぶりの女性入室者だし、男どもが浮き足だっている。まあ、既にイイヒトが居るなら、あいつ等には出番が無い」
カトレアの笑い方は嫌味では無い。
「え、エイゼルはイイヒトじゃないですよっ! 兄代わりみたいな人です。保護者みたいな」
凛子の言葉を正しく理解したという理由からか、若しくは照れ隠しだとでも思われたのか、カトレアに宥められるように肩を叩かれ、複雑な気分になる。
「夜遅い時間だと婦人達が浴室を使用する事が多いから、行くなら今だな。それでは」