扉の向こうの王子様~終電帰りの限界社畜OL、玄関のドアを開けたら異世界と繋がっていました
◇◇◇

 シェイルは執務室で報告書を読んでいた。
 凛子の蒼月亭訪問について、ルーファからの詳細な報告だ。
 リゼットとの会話内容も、ある程度記されている。
 こちらは凛子が記録した物と、リゼットが記録した物がそれぞれあった。

「風呂に入らせてもらった――何を考えているんだアレは」

 リィン・カミーヤという女。
 素性不明。ラストゥーリャが身元引受人として保証している。
 二つの色持ちの癖に魔力値が低い。
 仕事はかなり出来る。

 リゼットの記録には、凛子があえて省略した会話迄丁寧に書きつけられていた。ただの純粋な記録として。

「気になっている、か――面倒だな」

 そう吐き捨てたものの、彼の胸の奥に妙な違和感がある。
 まるで、何かを忘れているような。
 大切な何かを、失くしてしまったような。
 シェイルは首を振って、その感覚を振り払った。

 考えても仕方ない。
 今は、目の前の仕事に集中するだけだった。
 シェイルは再び書類に目を落とした。

 窓の外では、月が静かに輝いている。
 夜の闇が、王宮を包んでいる。

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