花屋のガーデニング委員会!
3.さっそくバレちゃった!
なんと半日で入学手続きを終えたお母さんは、翌朝ピカピカの制服に身を包む空くんを被写体に、何十枚という写真を撮っていた。

「空くんカッコイイわ~! ほら、こっち向いて!」
「あはは……」

顔は笑っているけど、目が光を失っている。そう言えば私が入学した時も、こんな感じだったなぁ。お母さんって、思い出を写真に残すことが好きだから。同情の眼差しを送ると、空くんと目が合う。「助けて」って顔だ。だけど空くんごめん。こうなったお母さんは、誰にも止められないの! 私が手をあわせると、空くんは事情を察したらしい。観念したように、お母さんから出されるポーズに付き合う。

「空くんって優しいよね」

昨日はお風呂に入る順番を譲ってくれたし、今朝はトーストに私の分のバターも塗ってくれた。それに「庭の花を咲かせて」ってお願いを断っても、空くんは怒らなかったし……今更だけど、本当に断って良かったのかな? 断ったものの気になって、昨日から何度も自問自答している。

「ん?」

お母さんから解放された空くんが、私の元へ倒れ込んだ時。目を疑った。空くんの腕が透け、向こうで写真を確認するお母さんの姿が見えている⁉

「ちょ、空くん!」
「おわ!」

 ガシッ

空くんの腕を握り、ペタペタと触って確認する。よかった。ちゃんと感触がある。じゃあ、さっきは気のせい? 腕を握ったままの私を見て、怪訝な顔をする空くん。「なんだよ」と言いながら、私の手からゆっくり腕を引き抜いた。

「ご、ごめん。なんだか空くんが消えちゃいそうな気がしたから」
「っ!」

空くんはピタッと動きを止めて、目を見開く。だけど「そうか」と、地面に置いた自分のカバンを拾い上げた。

「気のせいだろ。太陽がまぶしくて目がくらんだか、それとも……」
「それとも?」
「まだ心春が寝ぼけているか」
「さ、さすがにもう起きているもんっ」

ニッと意地悪く笑う空くんを、ジト目で見つめた時だった。

「空くん、今度は心春の隣に並んでもらってもいい?」

再びカメラを構えたお母さんが、ビックリ仰天のお願いをしてきた。

「久しぶりに心春が良い表情しているから、一枚付き合ってほしいの」
「ちょ、お母さん!」

それってつまり、空くんとツーショットを撮るってこと⁉

「無理だよ、恥ずかしいっ」

パタパタと手を左右に振ると、お母さんが「え~」と落ち込む。そんな悲しそうな顔したって、ダメなものはダメだから! すると私の肩をポンと叩く手。空くんだ。

「写真くらいいいだろ。撮ってもらおうぜ」
「でも」
「久しぶりに心春が笑っているから、おばさんも嬉しいんだよ」
「あ……」

元気がないことを悟られないよう、家では明るく振る舞っていた……つもりだった。だけどお母さんは、全てお見通しだったみたい。

「心配かけちゃったなぁ……わ⁉」

突然、セットした髪を空くんになでられる。乱暴な手つきとは違い、私を見る目は驚くほど優しい。

「申し訳ないと思っているなら話は早いな。ほら撮るぞ」
「……もう。強引だなぁ」

仕方なく、先を歩く空くんの背中を追う。遠くでは、お母さんが「ココに並んで~」と既にカメラを構えていた。二人で移動していると、空くんが振り返る。

「ちなみに俺も、泣いていた昨日より、笑っている今日の心春の方が好きだぞ」
「っ!」

カッと顔に熱を集めた私を見て、空くんが「ハハ!」と豪快に笑う。そして何事もなかったように、さっさと歩いた。残された私は、忍者が壁にはりつくポーズで止まっている。頭の中で回るのは、さっきの一言。

「す、好きって……!」

恋愛的な意味じゃないって、私も分かっている。だけど頭上にある太陽が容赦なく照り付けるから、どんどん熱が上がった。

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