彼は魅惑のバレリーノ
「戸神さーん、こっちも確認したいことが。」

「わかった。
一華さん、少し待っててもらってもいい?」

「あ、はい。」

「良かったら私が案内するわ。」

「あ、ほんと。
じゃあ衣装を見せてあげてほしいんだけど。」

「わかったわ。
じゃあ、如月さんこっちにどうぞ。」

女性ダンサーは、動きひとつひとつが優雅だった。
歩くだけで絵になる人って、本当にいるんだ。

「どうぞ、これが衣装。」

「す、素敵ですね……」

ラックには海賊の衣装が並んでいた。
深い青に金の刺繍が施されていて、
光が当たると波のようにきらめく。

(これを着て踊るんだ……)

「写真撮っても平気ですか?」

「ええ。インターネットにあげなければ。」

「ありがとうございます。」

スマホを構えながら、
胸の奥が少しざわつく。

この人は、柊くんと同じ世界の人。
同じ舞台に立ち、同じ汗を流し、
呼び捨てで話す距離にいる。

私は――
ただのデザイナーで、
たまたま同居しているだけ。

(……比べちゃだめなのに)

衣装の刺繍を撮りながら、
胸の奥がきゅっと痛くなる。
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