彼は魅惑のバレリーノ
すると追い討ちをかけるかのように、彼女が口を開く。

「柊…って、すごいんですよね。
バレエダンサーの中でも一目置かれている。
本当は色々なところから呼ばれるほどのダンサーなんです。

一般人が関われる人じゃない。」

その言葉に、背筋がひやりとする。

鋭い目線。
優雅な笑顔の奥に、はっきりとした意図が見えた。

(……牽制、だ)

「だから、あまり…彼にちょっかいかけないでくださいね。
大事な時期なの。
彼、公演前はストイックで、食べるものや生活習慣もきちっとした人だから。
余計なストレスはよくありませんから。
貴女とは、住む世界が違う。
期待しちゃダメですよ?」

ふふっと笑うその顔は、
優しさではなく“線引き”の笑みだった。

「そ、そうですね。」

曖昧に返すしかない。

胸の奥がじんわり痛い。
言われなくてもわかっていたことを、
はっきり言葉にされてしまったようで。

衣装の金糸がきらめくのを見つめながら、
自分の立っている場所が急に遠く感じた。

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