彼は魅惑のバレリーノ

本番

いよいよ、公演当日。
私は舞台グッズの搬送を手伝いながら会場を動き回っていた。

はあー……ドキドキする。
胸の奥がずっと落ち着かない。

柊からもらったチケットを思い出す。

『一華さんには…一番良い席で俺のこと見ててね。』

昨日、少し照れたように渡してくれたあの顔。
思い出すだけで心臓が跳ねる。

グッズの売れ行きも好調で、
まさかの“ユキヒョウ海賊”が大人気。
自分の描いたキャラがこんなに愛されてるなんて、嬉しすぎる。

「一華。」

「あ、天音さん……って、呼び捨て?」

「いいでしょ。友達なんだから。」

「友達になるの嫌がってなかった?」

「気が変わったの。
私のことも美玲でいいわ。」

「じゃあ美玲ちゃんで。
それよりちょっと待って、私一応28歳!
美玲ちゃんは?」

「26歳。
年上に見えないわね、一華。」

「結局呼び捨て!」

美玲がくすっと笑う。

「私の連絡先これ。」

「教えてくれるの?」

「うん。仲良くなりたい。」

そう言って、ふいっと横を向く。
照れてるのが丸わかりで可愛い。

「美玲ちゃん可愛いー。」

「からかうなら教えない。」

「うそうそ、教えて。」

スマホを交換しながら、美玲が言う。

「私たちの舞台、ちゃんと見てね。」

「もちろん。」

「柊には会った?」

「まだ。邪魔じゃないかな?」

「まさか。
本番前に会えば? まだ余裕あるわよ。
こっち。」

美玲が手招きする。
私は胸の高鳴りを抑えながら、その後をついていった。
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