彼は魅惑のバレリーノ
実家からの帰り道、柊くんと高台にやってきた。
夕暮れが街をオレンジ色に染めていく。

「一華さん。話したいことがある。」

真剣な声に、胸がきゅっとなる。

「うん。」

「俺、来月フランスに戻ることになった。
日本公演が終わったから、今度はそっちでの公演が本格的に始まる。」

「うん。」

やっぱり。
そんな気はしていた。

柊くんの道を応援したい。
それは本心。
だからこそ——
別れを覚悟していた。

でも。

「俺、バレエダンサーとしての道も、一華さんと歩く未来も、どっちも諦めたくない。」

夕陽の光の中で、柊くんの瞳はまっすぐだった。

「え?」

別れ話だと思っていたから、
胸の奥がふっと軽くなる。

「一ヶ月に一回は無理でも、二ヶ月に一回は会いに行く。
毎日電話する。
メールもする。
寂しい思いはさせるかもしれないけど、不安にはさせない。」

風が止まったように感じた。

「一華さんだけを俺は見てるから。
だから…この先も俺と一緒に歩いてくれる?」
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