あやかし銀狼に恋をして〜じれ恋はやがて溺愛に包まれる
 「瑠宇斗さん、色々と相談に乗ってもらってありがとうございます。瑠宇斗さんに言われた通り、店長に採用が決まった大阪のデザイン会社の話をしたら、喜んでくれて応援するって。会社から直ぐにでも来て欲しいって言われて、それで・・・今日でここに来るのも、瑠宇斗さんに会うのも最後になります」

 会う度に好きになる。怪我をして心配してくれて、おぶられた時は痛みを忘れるくらいドキドキした。夢も真剣に聞いて背中を押してくれて、実現に至った。諦めようと心に決めて、ただ会うだけならと思って会うと、もっと大好きになってしまう・・・だから、藤野は今日で瑠宇斗にもう会わないと決めた。
 「それは良かった。怪我の件は、大切な時期に本当に申し訳ありませんでした」
 「謝らないで下さい。あれは本当に私がよそ見したせいなんですから・・・」
 「それでも、足元に気づかなかった俺の責任です」
 「それなら・・・責任を取って、私と・・・付き合ってもらえますか?」
 「・・・すみません。それだけは出来ません。俺の愛する人は、この先もずっと瑞穂だけですから・・・」
 「・・・それを聞けて諦めがつきました」
 藤野は笑みをこぼした。出会った日から、瑠宇斗にとって瑞穂は特別な存在だと分かっていた。そして、その思いが決して揺るぐことがないことも・・・どんなに振り向かせようとしても、愛を伝えたとしても、決して叶わないことも・・・
 「じゃあ、私、行きますね」
 「頑張って下さい。お元気で」
 頭を下げて瑠宇斗に背を向け歩き出した藤野は、湧き上がる感情を抑えきれず振り向いて駆け出し、瑠宇斗に抱きついた。
 「ありがとう、瑠宇斗さん。これで本当のさよならです」
 それだけ言うと顔も見ず、涙を堪えながら立ち去ったのだった。

 店に戻ろうとした瑠宇斗は急に立ち止まり、慌てて辺りを見回した。
 「瑞穂・・・今、瑞穂の気を感じたんだが・・・ダメだな・・・瑞穂を思い過ぎて・・・きっと気のせいだろう・・・今頃、瑞穂は何をしているだろうか・・・」
 離れてから瑞穂への愛情が増して、直ぐそばに来ていたことに気づかず、空を見上げて想いを募らせていた。
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